2008年3月28日金曜日

いろんな研究


3月20日に東京国際フォーラムで開かれた立花隆さんのシンポジウムの続編。

このシンポジウムには、私が仕事で関係してる先生たちも、何名か演者として登場していたの。
仕事ではメールだけのやりとりだけど、こうやって生のお声を聞くと、どんな研究をしているか、少しは身近に感じられるわね。

会場の様子はこちらで写真で見られます。

<モチベーション>

生理学研究所の伊佐正先生という方は、もともとはお医者さんだったようで、今はリハビリを中心に研究しているようです。

この方に言わせると、日本には147万人の脳卒中の患者さんがいるんですって。

でも、その中で、リハビリを一生懸命にしてかなり元に治る人と、リハビリが嫌いで治らない人がいるそうで、その違いの理由としては、モチベーションが大きく左右するそう。

たとえば、同じ脳梗塞になっても、あの田中角栄はついに治らなかったけれど、長嶋茂雄はかなり回復している。それって本人や周りの気持の持ちようで全然違ってきているということでした。

そういうことを伊佐先生はサルの実験から、説明していました。
手首をけがをした猿も、30日くらい訓練をするとかなり回復してくるの。

脳の中に「モチベーションの中枢」という領域があるそうで、そこと運動野といわれる場所との相関関係を明らかにしていました。

けがをしたり、脳卒中になったりしても、3か月頑張ればかなり回復できるという話は、希望が持てるわね。

私の祖母も父も、倒れた後はリハビリが嫌いで訓練などしなかったので、だんだんと機能が衰えてきて、そして亡くなってしまったの。
モチベーションもなかったと思うわ。

体の機能が衰えていく人に、どうやったらモチベーションを高く持ってもらうことができるのかしらね?

<手を交差させてみて>

順天堂の北澤茂先生も、何回かメールのやり取りはしたことがあるのだけれど、なんとなくお年を召した方だと思っていたのよ。
でもこのシンポジウムでお顔を拝見して、全然想像外だったわ。とても若々しい方だったんですもの。

この先生はいろいろな手の実験のことを話されたの。

右手と左手を出して、手の甲をチョチョンと突っつくの。そしてどちらの手を先に突っついたかを当てるとう実験をしたそうよ。

もちろん、普通なら右が先か、左が先か、なんて簡単に判断ができるでしょ。

ところがね、右手と左手を手首のところで交差して、同じように突っつくと、どちらが先か分からなくなることがあるんですって。

つまり時間の流れを間違えてしまうそうです。

これって、子供の頃、掌を交差させて、相手から「この指を上げてみて」という遊びをしたのを思い出しました。

また、手に棒を持って、その棒の部分をクロスさせて同じ実験をすると、やはりどちらが先か分からなくなるんですって。

そういうことから、皮膚に対する刺激と、目に映る刺激との関係を考えたそうよ。

結論から言うと、それって、目が見える人は、皮膚から受ける信号を、手や目の「視覚空間」に統合するための代償として、時間が逆に感じられるのではないかということでした。

この実験は手の交差だけではなくて、足をクロスさせたり、手と棒の両方をクロスさせたり、いろんなパターンをしてみたそうです。

研究者というのは、本当に何回もいろんなことをするものだと思いましたわ。

<奥行きのある世界を見る>

このお話をしたのは、日大の泰羅先生という方。
この先生ももっとお歳の先生だと思い込んでいたのだけど、お若くてもじゃもじゃ頭がユニークな先生でした。

まず、人がある絵を見たとき、たとえば「黄色い自動車が向こうのほうから近付いてくる」というようなシーンの絵を見ても、すぐにそういうふうに判断ができるでしょ。

でもそういうふうに空間が分かることって、脳の特別なところが働いている結果なんですって。

もしその場所が壊れていると、世の中が平らに見えてしまうそうよ。

そういう人の描く絵は、家でもぺったんこだし、そういう人は積み木などはうまくできないんですって。
可哀そうね。

目が二つあるのも、そういう奥行を知るためでもあるのね。

終りにCGグラフィックスを使って、本当は平面的な絵なのに、いろんな陰影をつけた形から、奥行を図るということも見せてもらいました。

人間の眼ってだまされやすいのね。

<ブレインインターフェースの最先端>

このお話はたぶん、今の脳科学の最先端だと思うのよ。
簡単にいうと脳の中で考えていることが、相手に伝わる、という感じかしら。

ATRの川人光男先生とは会議やメールではお付き合いがあるのだけれど、実際に研究のお話を聞くのは初めてでした。

先生はもともとは物理学の専門家だったのだけど、今ではロボットの専門家のように思われてしまっているみたい。本来は脳のことを物理的な計算をして表す研究をしているようです。

今回は先生が研究したロボットのことを、大阪のテレビが取り上げたので、そのビデオを見ながらのお話でした。

たとえばアメリカにいるサルの脳の動きをネットワークを通して、日本のロボットに伝えて、そのロボットもサルのように歩くの。

先生の研究は頭で考えたことで機械を動かせるかもしれないし、病気の人に役立つかもしれないし。

あまりに最先端すぎて実感がわかないのだけれど、そのために莫大な研究費が投じられているそうよ。

それにしても一昔前は、情報機器とか通信機器とかいうと、電話やFAXくらいしかなかったでしょ。
ましてやそういう手段と脳が繋がるなんて、想像もしなかったと思うのだけど、今ではいろんなネットワークと脳の中身がつなぐこともできるのよね。

時代の進歩を感じたけれど、多くの人に役立つようになってもらいたいわ。

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