吉田修一の小説「悪人」を文庫本で読みました。
今、ちまたではこの映画が流行ってるので、本のカバーにでかでかと妻夫木聡と深津絵里の顔写真が載っていて、それがすごく恥ずかしいのよ。その上にもう一枚、本屋さんのカバーをかけています。
文庫本は上下2冊組で、上巻が妻夫木、下巻が深津絵里の写真です。
本を読み出してすぐに、金髪の男が妻夫木の役だと分かったけれど、深津絵里はどの役をするのだろうと思いながら読んでいました。まさか殺された20歳ちょっとの女の子の役じゃないだろうし・・・・。と思っていたら下巻になって、妻夫木といっしょに逃走する紳士服店の売り子の役だと気付きました。
吉田修一の本を読んだのは初めてですけれど、なんというか文章が乾いている感じがしました。というか、ウェットな文章ではなく、また修飾語が多い文章ではなくて、わざと無味乾燥のような文体にしているのかもしれません。
ストーリーよりも何よりも気になったのは、九州弁、それも長崎弁、佐賀弁という北九州地方の方言の使い方のうまさでした。
私は昔、ここの出身者と知り合いが多く、何度もそこに出かけ、その方言を耳にしていましたが、この小説はこの独特の方言で語られているからこそ、小説が成り立っているという気がしました。
前に読んだ「防風林」のように北海道が舞台だったら、絶対にこの小説は売れなかったと思うの。
ちなみに吉田修一と言う人は長崎県出身ということで、やはりそうでなければここまでうまく、書けないでしょうね。映画で主人公を演じた妻夫木は博多出身、深津絵里は大分出身とのことでした。だからきっと九州の方言が自然にしゃべれたでしょうね。
言葉って大きな役割があるのだと思いました。
殺人犯と一緒に逃避行をするというストーリーはどこかで読んだことのあるような気もしましたが、その二人をとりまく家族の存在がうまく書かれていましたね。
崩壊しつつある家族の描き方など、うまいなと感じました。
子育てを放棄してしまったお母さん、その子を引き取って子育てをしたおばあさん、殺された女の子の床屋のお父さんのことなど、すごく気持ちが伝わる書き方でした。
主人公よりも周りの人間の描き方がすごくうまい人ですね。というか、主人公のこと、よく分からない部分もありますね。
それにしても、出会い系サイトで知り合ってすぐにホテルに直行してしまうような若い男女関係とか、老人相手の胡散臭いサギ的商売の話とか、おバカな大学生のこととか、現代日本の嫌な面がたくさん溢れていて、なんだか読んでいて寂しい感じもしました。
この本は、映画化することを前もって考えて書いた小説のような感じがしましたね。
でも深津絵里役の女の人が、いったん捕まって、警察の手から逃げ出したのに、また彼氏と一緒に逃避行を続けるところは小説にしてもちょっとウソっぽかったかな。
それでも最後の章では、あれほど必死になって一緒に逃げていた紳士服屋さんの女店員もまたお店に復帰した、というところなど、えー、そんなことってあり? とちょっと驚きました。
映画は見て見たい気もするけれど、あまり流行っている間には見たくないかな。妻夫木くんも深津絵里も逃走するにはきれいすぎない?
前に高村薫の「照柿」を読んで、どんよりした人間関係が描かれていて、そのねっちょりとしたいやーな感じにものすごく引き込まれて、凄くうまいなと思ったの。
でもこの「悪人」はそれほど嫌な感じがしないの。というか、先にも書いたけれど湿気の感じられない小説だと思ったわ。
男女の関係があっさりとしているというか、急に好きになったり急に嫌いになったりして、ちょっと分からない部分がありました。
そんな感じかしら。
4 件のコメント:
こんにちは
ダチョウの件、以前のブログで 家で咲く「タツナミソウ」と ダチョウの産毛がジイソックリだったので、ダチョウの写真をshiollyさんから お借りしたのです。
足は速いですが、今回のダチョウは髪の毛の薄さです。^^
ハッセルぶらっとさん=ダチョウ説、了解です。細身で足が速そうですよね。
私は髪の毛の量が多すぎて困っているのです。美容院に行くといつも、「多いですね~」と言われて、毛を少なくしてもらっていますよ。多いので頭が暑いのです。
乾いた感じ、ですか。気づかなかったわ。情緒に流れないとこは、あるかもしれませんね。
さびれた漁村に祖父母と暮らす、土木作業員の青年の孤独と閉塞感が、胸にせまりました。かといって、人を殺めていいということには、絶対になりませんよね。
明確なテーマを持ったメッセージ性の強い作品の気がします。
吉田さんの小説では、「湾岸風景」とか、「7月14日通り」も好きかな。こちらは、ラブストリーの色彩が濃いですね。
マサさんはこの方の本、たくさん読んでいるのですね。
長崎の漁村というところがジーンときました。魚の臭いがしてくるようでした。こういう青年は多いのかもしれませんね。妻夫木聡がどんなふうに演じたのかも気になりますね。
おばあさん、きききりん(漢字が出てこないわ)あまりにもぴったりしすぎだったでしょう。
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