2010年9月14日火曜日

「防風林」

マサさんが読んだという住井するみさんの「防風林」を図書館から借りてきて読みました。


通勤時間の往復を利用して1日で読んでしまいました。
(夢中になって読んでいたせいで、電車を乗り過ごしてしまい、慌てて逆戻り。)

この本のこと、事前の知識はまるでない状況で読み始めたので、最初のうちはこの本は恋愛小説かと思っていたの。

ある男性が、自分がまだ高校生だった時、隣に住む7歳年上のお姉さんに性愛の手ほどきをしてもらい、そのお姉さんとある時再会して、また愛が芽生える・・・・そういう単純なストーリーかと思っていたのです。

ところが、どうもそういう話ではないとだんだん気づきました。どうもミステリーらしいのね。

この男性のお母さんが肺がんで後何日も生きられないという状況になり、そのお母さんが若かりし頃に付き合っていたという謎の男性を探すために、主人公とそのお隣のお姉さんだった人は二人で旅に出るのです。

その旅先でいろんなことが分かり、そして謎解きの世界に入ります。

結果がどうなるのか、どんどん読みたくなる話の展開はうまいですよ。

それに主人公の現在の話と、お母さんが若かったころの話をうまく組み合わせてる構成は、映画を見ている感じで、時の流れがうまく表現されていると思いました。
実際に映画化されたら、この隣のお姉さんは誰が演じるのかしら、なんて思いながら読みました。

ところが、この本の中で、どうしても自分の理解を超えていたのは、次の2つのところでした。

ひとつには、肺がんで骨と皮だけになった瀕死のお母さん、という設定は、私にはそのお母さんは80歳くらいだろう、と勝手に想像していたのです。ところがそのお母さんと言うのは、「母は59歳で亡くなった」と書いてあり、えーっ、まだそんなに若いのに、とのけぞりましたよ。
お母さんが59歳だとすると、ということはこの主人公の男性もまだ30歳ちょっとなのね? 私はこの男性はてっきり中年男性だと思い込ん読んでいたのですけれど、まだ若い男だとすると、読み方もちがってくるわね。

本をしっかりと読んでいれば、「高校生の時から17年ぶりに彼女と再会した」と書いてあるので、この男性は34歳くらいということは分かったのに、行動パターンや言葉づかいからもっと年上だと思ってしまいました。

それともう一点。欠点というよりも、私には想像が及ばないことなのですが、このお話の舞台が北海道であるということは、あまり北海道のことを良く知らない私には、すんなりなじめなかったわ。

永井さん自身は北海道大学農学部出身ということなので、札幌や帯広のことをよくご存知なのでしょうけれど、雪国とはあまり縁のない私は、札幌にある防風林や大きな楡の木のイメージが沸きませんでした。

私は北海道というと、観光地のイメージが強いので、なんとなく明るい大地という感じを受けていたのだけれど、本当の北海道はそうでもないみたいですね。

雪が積もっているときに、お墓参りにポットにお湯を入れて持参したというシーンがあるのだけど、じつはそのお湯はお墓の上の雪を溶かすためだった、と書かれていると、そうか、北海道ってそういう苦労があるところなのね、としみじみ思いましたね。

主人公の年齢の設定と、物語の場所の設定にはちょっと馴染みが沸きませんでしたけれど、でもひとつひとつの文章が短くて歯切れが良いし、構成もうまくできているし、適当に通俗的な場面もあって、面白い本だと思いましたよ。

このお話には、主人公を取り巻く女性として
・病床のお母さん(美人だったに違いない)
・年の離れた妹(小さな子供を育てるためにやっきになっている)
・東京に残してきた奥さん(世俗的な教育ママとして書かれている)
・7歳上の隣のお姉さんだった人(現在は裕福な実業家の奥さんでその義理の息子ともデキている)
・その彼女のお母さん
・田舎の老女(口が悪くて、態度も悪い)
などいろんなタイプの女性が登場します。

さて、読んでいる自分はどのような女性に当たるのかしら、と思いながら読むのも楽しいですよ。

永井さんのことを知るためにはこんなサイトがいいかもしれないのでご紹介します。

「作家の読書道」
彼女の写真とともに、どんな読書をしていたかの傾向が良く分かるインタビューです。

それにしても49歳でお亡くなりになったとは残念なことです。

今日はまた、「隣人」というこの作家の本を借りてきました。また電車の中で読むことにしましょう。

4 件のコメント:

マサ さんのコメント...

私は、主人公をなんとなく藤木直人をイメージしながら読みました。
お母さんは美しくはかなげで、その恋人は文学青年風。西島さんみたいな感じかな。
隣のお姉さんは、かなりの曲者ですよ(笑)ほとんど悪女だと思うけど、逆に悪女っぽくない知的な女優が演じると面白いかも知れないですね。
なんて言いつつ、どんな結末だったのかよく覚えていないの(汗)

北海道は明るい大地というより、暗く閉ざされた冬のイメージがあります。
夏の北海道を羨ましがると、札幌の娘に「じゃあ、冬に来てみな」と言われます。

おおしまとしこ さんのコメント...

そうか、主人公は藤木直人! そう思って読むとまるで感想が違ってくるわ。でもあまりにそれはハンサムすぎませんか? 
お母さんの恋人が西島さん、というのは割といい線いっているかも。
隣のお姉さん、それこそ深津絵里でもいいかも。
私は前に暮れに北海道に行きましたけれど、小樽とか札幌とかの観光地ばかりだったので、暗いイメージがなかなか湧いてこないんですよね。

今、「隣人」を読みだしましたけれど、どうも落ちがよく分からなくて・・・。
自分の頭が悪いのかな、なんて思いながら呼んでいますよ。

さと さんのコメント...

小説とは関係ないけれど北海道から帰ったばかりなので。。。(笑)
札幌もこの頃は一軒家だと雪捨てが大変だから駅前とかのマンションに移り住む団塊の世代の人が多くなったって言ってました。

冬は生活するのは大変なんでしょうね。
でもなぜ平らな屋根が多いのか不思議に思っていたら最終日にやっとわかった(笑)
電車で上から見たら傾斜になっていて真ん中に雪解け水が流れるようになっていました。

色々と工夫がされているのですねぇ。

おおしまとしこ さんのコメント...

北海道って、行く季節によって感想が変わってくるでしょうね。たしかに雪かきは年寄り世帯になったら大変だろうとおもうわ。
北国の薄暗くて寒そうな雰囲気は嫌ね。その分、夏が待ち遠しいのでしょうけれど。
この小説、そういう暗い雰囲気があふれていました。