鳥越碧さんという人の小説を立て続けに3冊、読んでしまいました。
とにかくすごく面白い!
最初に読んだのは「萌がさね―藤原道長室明子相聞」。
これは平安時代第一の権力者である藤原道長の奥さん、明子(めいし)の話です。
彼女は少女時代に憧れていた男性とはプラトニックのまま、道長の奥さんになるのだけれど、40になっても、50になってもその男性のことが忘れられないのね。
その人は俗物的で出世街道一筋の道長とは違って、高尚で頭脳明白でとにかくカッコイイ人のようなのです。
その男性に引きつけられ、思いを込めつつも、気に食わない道長といっしょになり、なんだかんだと言いながらも6人も子供を生んでいるのよね。
とまぁ、あらすじを書いてしまえばどうということのないお話なのですが、面白い歴史小説です。
ストーリーを読み進めれば、平安時代の権力争いもよく見えてくるし、さりげなく清少納言やら紫式部さんも登場してきて、話の運びがうまいと思ったわ。
その次に読んだのは、「建礼門院徳子」。
これは平清盛の娘で安徳天皇の母である徳子さんのお話。
彼女も高倉天皇という夫がいながら、養父であり夫の父親である後白河上皇のことが忘れられずに悶々とするのです。
ご存じのとおり、彼女は壇ノ浦の海に飛び込みはしたけれど、源氏側に助けられてしまい、京都の寂光院で尼として生きていきます。
この時代の女性というと、清盛の奥さんの政子のことや、常磐御前の話が有名で、徳子さんという女性のことは、世間ではあまり評価されないようですが、この本は彼女の胸の内をきめ細かく描いていて、結末は分かってはいても、ワクワクしながら読み終えました。
3冊目は「一葉」。
これはご存じ樋口一葉の24年間の生涯をつづったお話ですが、彼女がまだ「夏子」と呼ばれいていたころからのお話です。
貧しくとも武士の娘である誇りだけは高かった一葉さん。
そんな彼女が、小説の師と仰いだ桃水さんとのプラトニック・ラブを描いています。
最後には結核で亡くなってしまうのですが、彼女もまさかお札の肖像画になるほど有名になるとは思いもしなかったでしょうね。
この3冊の小説のヒロインに共通することは、みなさん、それぞれにプライドが高いことね。
それともう一つの共通点は、肌も重ねない男性のことを末永く思っていることですね。
そんなに好きで好きで仕方ないのに、どうして「好きです」とも言えず、自分を投げ出さず、生身の裸の姿を見せないのでしょうね。その辺は私にはよく分かりません。
そういう彼女たちの生き方は読んでいてイライラするのだけれど、でも歴史恋愛小説としては、面白かったですね。
これから読もうとしているのは「花筏-谷崎潤一郎・松子 たゆたう記」。
こちらは正式に結婚している夫婦の話ですが、どんな展開になるか楽しみです。
これまでたくさんの女流小説家の本を読んできましたが、鳥越さんもまた素晴らしい作家だと思います。
歴史上の女性の生き方を、これでもかこれでもか、と思うほどしっかりと描いている方だと思いました。
2 件のコメント:
一葉にそういう思う人がいたなんて、知りませんでした。勉強になりました。(^^)
延千代さん、一葉の恋の相手は作家だったのですが、結局、彼女のほうが相手よりも上に行ってしまい、売れっ子になったわけですね。
その辺は微妙だったと思いますね。
今では美人作家のように言われていますが、当時は彼女は髪の毛が少なくてすこし縮れていて、それが不美人の代名詞のようだったようで、一葉はかなりコンプレックスを感じていたようですよ。当時はまっすぐな髪が一番だったのですね。
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