昨日は大雪だったので、どこにも出かけずに、おうちで本を読んでいました。
私は江戸時代の町人たちを描いた小説、それも女性作家の手によるものが好きなのですが、平岩弓枝さんも宇江佐真理さんも植松三十里さんも諸田玲子さんも、図書館にあるものはほとんど読みつくしてしまい、ちょっと寂しく思っていました。
そんな時、手にしたのが和田はつ子さんという人の書いた「南天うさぎ」でした。
これは主人公の設定に意外性があって面白いのです。
「いしゃ・は・くち」という看板をかかげた口中医というお医者さんが主人公。今でいうと歯医者さんのような若い男性が中心人物なのです。彼は本当は呉服さんの息子なのですが、お店は妹にお婿さんを取ることにして、自分は歯医者稼業に専念しています。
そして彼を取り巻く若くて美しくて聡明な幼馴染の女性、そして同じく幼馴染の飾り職人の三人がチームを組んで、事件を解決していくという設定になっています。
これまでにもお医者さんやお産婆さんが主人公と言う時代小説はありましたが、歯医者さんというのは珍しいですよね。
本を読んでいると当時の人々の歯に対する認識も分かります。
上流階級の人は今の歯磨きのようなことはしていましたが、庶民はなかなか歯を磨く習慣がなく、そのため、歯槽膿漏のような病気も多かったようです。
また「悪くなった歯は抜けばよい」と考える医者も多く、麻酔もせずに無理やり抜いてしまい、そのあとに悪化したという例もよくあったそうです。
そこで活躍するのが、手先の器用な飾り職人で、ごく細い房を作って、それで口の中をきれいにするということを、この歯医者は町の人たちに教えていたようです。
そして盗難事件や殺人事件に発展するのですが、「南天うさぎ」というのは、大奥の女性が誂えた打ち掛けの名前でした。ということで、この三人は大奥で起きた事件にも関わることになっていくのです。
登場人物の設定は面白いのですが、事件の解決については、ちょっと分かりにくいですね。というか、少し強引すぎるかな。
この歯医者さんの時代小説はシリーズになっているようですが、主人公の桂介さんが、宇江佐さんの伊三次のような魅力的な男になっていくのでしょうか。
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