2016年2月9日火曜日

対照的な二つの着物イベント

先週、二つの着物イベントに出かける機会がありました。
その内容がとても対照的で、そういう意味では面白い体験でした。

最初に出かけたのは銀座で開かれた「らくや」▼さんのイベント。

こちらは着物スタイリストの先駆けである石田節子さんや、そのお弟子さんたちが活躍されていらっしゃるお店です。
今回のイベントは「日本の繭から生まれるものがたり まとふ。かぶく 衣装くらべ ~歌舞伎~ 」というタイトルがついていました。


会場には、石田節子さんがプロデュースされた純国産の「らくやブランド」である倉渕紬や、富岡シルクが展示されていました。

歌舞伎の代表的なヒーロー、「助六」の前で、ハイポーズ。


こちらの着物は細かいストライプが入った織の着物でした。


人気の着物スタイリストで、書家でもある秋月洋子さんの白い帯は、「富岡こがね」というものだそうですが、ご自身で書かれた文字がありました。
さすがですね。

着物の八掛けにも、文字が入っていて、心憎い演出でした。


歌舞伎にちなんだ着物や帯の展示だけだと思い込んでいたのですが、会場の半分には江戸小紋、大島紬、結城紬などの有名産地のコーナーがあり、それぞれ担当の方が接客されて、いろいろと説明されていました。

綴れ織りの帯の実演がありました。
爪で掻きながら行うので、「本爪掻綴れ」と呼ばれるのだそうです。


横糸を斜めの角度に通すのが、この織物の特徴だそうです。
帯を織っているところです。
職人技をご披露中。


こちらは吉永小百合さんが携帯電話だったかのコマーシャルで着用されたという博多織の帯です。
昔ながらの博多織のきっちりとしたイメージとは違って、はんなりした感じで、使い良さそうな帯でした。

いろいろと拝見させていただきましたが、素人の私の感想としては、それほど「かぶく」ではなかったような気がします。
正統派で、きちんとした感じを受けました。

アクセサリーなどには遊び心があったと思いますが、羽目をはずしたような「かぶく」には至らなかったのではと思いました。

独自のブランドである「倉渕紬」なども素敵でしたが、私が良いなと思った紬は55万円、帯は27万円でした。
それは反物だけのお値段で、仕立て代金や裏地などの代金は含まれていません。
諸々合計すると、着物と帯で100万円近くなりそうでした。

そんなに高額ですと、ポンと気楽に買えるものではありませんね。

もちろん制作には手間がかかっていて、良いモノだというのは、素人目でも分かりましたが、着るものにそこまでお金を掛けられる人は、どれくらいいるのかしら、と思いました。

会場にいらっしゃっていた方は、中高年のしっとりとした奥様風の方が多いような雰囲気でした。

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この日の装い。

亡くなった叔母が着ていた昭和の着物です。
両脇と袖には紐が描かれています。
ちょっと歌舞伎座にでも行くような気分でしょうか。


叔母が88歳の米寿のお祝いの時、この着物を着た写真がありました。


私の帯は、梅屋さんの変わり市松模様の帯。
短く仕立てていただいたので、締めやすい帯です。

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別の日には、「きものバスケット」▼というイベントに行きました。

東京の東部にある曳舟というところで行われました。


「きものバスケット」は、今までは川崎のほうで開かれていましたが、今回はスカイツリーの近くでした。

「直や」▼さんという仕立て屋さんのおうちで開かれました。
以前はお寿司屋さんだったというお店を改造したのだそうで、下町っぽい雰囲気が良いですね。


リサイクル着物、手づくりアクセサリー、和小物などが出品されていましたが、着物は高くても数千円程度だったと思います。

そして一番の違いは、やってくるお客さまの層でした。

若い女性が自分の好きな着物や羽織、カラフルな足袋や履き物で、どんどん詰めかけていました。
カラフルな装いで、着物を楽しんでいるという雰囲気が伝わってきました。
あっと驚くようなお洒落な方も、いらっしゃいました。

お店の人との会話も、友達同士という様子でした。

畳の部屋に座り込んで、あれこれと物色するだけで楽しいわ、という熱気が伝わってきました。

こういう場面に出会うと、「着物は衰退している」というのは、間違いではないかとも思われました。
着物業界は衰退しているかもしれませんが、着物愛好家は増えているかもしれません。


会場には、私のようなおばあさんはいませんでしたが、男性の方もちらほらといらっしゃいました。

今回は探していたものが見つからず、手ぶらで帰りましたが、他の人たちがお買い物をする場面を眺めていただけでも楽しかったですね。

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この日の装い。

この後に、邦楽の演奏会に行く予定だったので、ちょっときちんと感のある春らしい色の小紋にしました。
黄緑色の地に、白や小豆色や水色の模様があります。
これはデパートの催事で1000円で見つけたもの。


金銀銅色の袋帯は、今回のイベントにも出店されていた「ワモノヤトウキョうジョウ」▼さんで買ったもの。
店主はこちらの方です。


ユニークな袴もたくさん扱っていらっしゃいます。

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どちらのイベントが良いというわけではありませんが、あまりに対照的だったので、印象に残りました。

私自身は、どういうところで着物を選ぶのが好きかと聞かれたら、リラックスした雰囲気のところで、いろいろと試しながら選べたらいいなと思いますね。

「買って、買って」という押し付け感がないのが一番です。

値段は高くても安くても、気に入ったものなら、私の場合、それほど重要ポイントではないですね。
フリマなどで300円の着物を買うこともありますし、有名作家さんのもので、○○万円の着物を着ることもありますから。





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