2011年9月2日金曜日

「朱花の月」 3

私の癖として、一つの事柄をかなり引きずるのですよね。
たとえばたった1泊の旅行でも、数日間ブログに連載したりします。

それと同じパターンかもしれませんが、先日見た「朱花の月」という映画からは、いろいろなことが膨らんできました。

これは飛鳥を舞台とした映画ですが、万葉集つながりで永井路子さんの「茜さす」上下巻を読み終えました。


主人公の「なつみ」は某女子大の日本文学科を卒業した女性です。

ちなみに永井さんは私の大学の大先輩なのですが、このなつみが通っていたE女子大というのは、まさしくその大学のことですね。本を読んでいると「ああ、あのことね」とうなづくことがいくつもありました。
小規模で、校庭の端には緑のスロープがあるところなど、あの大学を思い出させてくれます。
すごい良家の子女がいたり、反対に仕事にまい進していく学生がいたりするところも、そっくりでした。

なつみは万葉集を卒論に選んだことから、持統天皇に興味を持ち始めます。
そして就職がうまくいかなかったこともあり、飛鳥で遺跡発掘調査のアルバイトをするのですが、だんだんその世界に惹かれて行き、ついには「壬申の乱」を徒歩で歩くという経験をすることになるのです。

ちなみに壬申の乱というのは今から1300年ほど前、天智天皇の後継ぎを狙って、弟の大海人皇子と、息子の大友皇子が戦った乱ですが、古代史上では最大のクーデターであると言われています。

その後、戦いに勝利した大海人皇子が天武天皇となり、天皇を中心とした政治をするようになりました。
持統天皇はこの天武天皇の奥さんだったわけですが、天武天皇が病死してからは彼女が政治の中心を担うようになりました。

この辺りの話は、登場人物の名前が難しく、また親戚同士の結婚も多いので、かなりややこしい人間関係だったようですね。

でもそんな昔の女性であっても、筑紫の方に行ったり、飛鳥から山を越えて桑名の方まで行ったりしているのですから、ちょっと想像がつかないですね。

なおこの本は今から25年ほど昔、永井さんが多分60歳くらいの頃にお書きになった小説ですが、現代と古代がミックスして面白いと言えば面白いのですが、やはり60歳の人が女子大生のことを描くのは少し無理があるような感じがしました。古代の話は面白いのに、今(1990年ころ)の話となると、なんだかちぐはぐな感じを受けました。
でもそれを差し引いてもかなり魅力的な内容でした。

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またこの映画のトークイベントに出演されていた里中満智子さんのエッセイや漫画も何冊か読みました。

里中さんという人は私とほぼ同年代の方ですが、なんと16歳のときに漫画家としてデビューして以来、ずっと漫画家の第一線にいらっしゃる方です。

この人のエッセイによれば、昔から歴史ものがお好きだったようで、そして男・女といった垣根を超えるような漫画をたくさん描いていたようです。


彼女のライフワークともいえる「天上の虹」は全20巻以上もある長編漫画だそうですけれど、このヒロインは持統天皇。
というか、「う野讃良皇女」(うののさららのひめみこ)と呼ばれていた女性が天皇になるというストーリーです。
彼女は妻として母としてそして女帝としてたくましく生きた女性として描かれています。

この漫画を読んで初めて知ったのは、いわゆる三種の神器(草薙の剣、やたの鏡、勾玉)は持統天皇が天皇の正当性を訴えるために、初めて登場したということ。それ以降、天皇の皇位を認めるものとなりました。

また、いわゆる「暦」を最初に考え出したのも持統天皇だそうです。それ以前は自然の移り変わりを目安にしていたそうですが、国家が国家であるためには月日がきちんとしていたほうが良いということで暦を取り入れたそうです。

この「天上の虹」は今も連載が続いているようですけれど、漫画家という人はすごいものだと思いますね。
ストーリーを考えるだけでも大変なのに、それを絵にするのですから、その時に着ていたモノや髪型、身の回りのものなどもすべて検証して描いているのでしょう。素晴らしいものです。

とはいえ、このころの話は、やはりイマイチ身近に感じられないのも事実ですね。

たとえば江戸時代の話だと、そこに登場する町や川なども、現代と置き換えて頭に浮かぶのですけれど、万葉の時代の話だと、関西が舞台ということもあり、なかなか身近に感じられません。

やはり一度万葉の舞台に行ってみないと駄目でしょうね。

ちなみに「朱花の月」は明日から劇場公開されます。
行きたいのですけれど、あまりにあちこちの映画評論などの対象となっているので、かなり混むのではないかとそれが心配です。

2 件のコメント:

マサ さんのコメント...

としちゃんは、ひとつのことに触れると、奥深く追求して、裾野をどんどん広げていくのね。
トークイベントも、聞いておしまい、にはならないわけよね。
教養というのは、そうして身についていくわけか。感心してばかりいないで、私も見習わなきゃ。

「朱花の月」が公開されるのは、東京では渋谷のユーロスペースだけなのね。
私も観たいと思っているけど、1館だけなので、公開直後は混むかもしれませんね。

おおしまとしこ さんのコメント...

マサさん、私はマサさんの書く文章のようにピリッと引き締まった文章が書けないので、だらだらといつまでも続けているんですよ。

今日、見てきましたよ。
A新聞はものすごくこの映画の広告が多くて、力を入れているみたいですけれど、1館しかやらないのでは行きにくいですよね。