こちらの「瀬戸内晴美全集」の中の8巻目でした。
タイトルは「中世」ですが、中世といっても舞台は鎌倉時代の1300年前後、ちょうど元寇のころのお話です。
時代は後深草天皇と弟の亀山天皇の頃。彼らが皇位を争ったことで、後の南北朝へと続くころです。
これは、誰に問われたわけではないけれど、自分の人生を語るというものです。
「とわずがたり」を書いたのは、後深草院の彼女である二条さん。
14歳から49歳までの女盛りを語っています。
これが本当の話だとしたら、今だったらすごいスキャンダルになったと思われる内容が次々に展開されます。
天皇や上皇などの女あさり、権力目当ての貴族たち、そのなかで翻弄される女性たち。
歌舞音曲や和歌などの文化の担い手でもあったとは思いますが、当時の天皇たちの酒池肉林の世界は、あまりにもはちゃめちゃ。
そして「中世炎上」はこの「とはずがたり」の瀬戸内晴美版ともいうべきもの。
二条さんの奔放ともいう人生を、瀬戸内さん独自の筆使いで追って行きます。
ストーリーをごく簡単にかいつまんでみると、二条さんは、「源氏物語」の紫の上と同じように、それまで膝の上でだっこされていた大好きなおじさまの養父の後深草院から、女にされてしまいます。
その後は、後深草院の女房、つまり私設秘書のような役割を務めていきます。
彼女は朝廷というサロンで華やかに振舞っていました。
しかしあるとき、実兼という若い貴族と恋仲になってしまいます。
院と貴族の二股をかけていて、それぞれの子供を身ごもりますが、その子供たちを自らの手で育てることなく手放すことになります。
その後も、院が手引きした、何人かの貴族にも身を投げ出していきます。
貴族だけではなく、お坊さんとも関係を結んでしまい、そのお坊さんが煩悩で悩み苦しむところなど、本当だろうかと思ってしまうほど壮絶。
愛しあうことの悩みは、身分にも男女にも関係なく辛く、深いのでしょう。
彼らとのラブシーンはかなりエロティックに描かれていて、ドキドキするほどでした。
実はこの小説は、瀬戸内晴美から瀬戸内寂聴へと出家する前に描かれていたものです。
瀬戸内さんが、現世とのお別れを意識したのか分かりませんが、二条の、たとえ相手に対する心は冷静でも、身体は熱く燃え上がってしまう様子が濃厚に描かれていて、これはポルノ小説ではないか、とも思えるほどでした。
あまりにエロっぽい場面が続くと、恋愛遍歴ばかりで飽きてきてしまったところもありました。
しかし、その後、二条はそのような生活に疲れてしまって、出家することになりました。
自分の力では生きていけない女性の悲しさが伝わってきました。
そして「女西行」として、日本各地を行脚しているところで小説は終わります。
美しく生まれてきた二条さんは、得をしたのか、損だったのか・・・。
もし私が十代のころに読んだら、あるいはまだ子供のいないころに読んだら、きっと違った感想が
あったことだろうと思える小説でした。
「とはずがたり」は読んだことがないので、なんとも言えませんが、「中世炎上」は非常に濃厚な小説で、これは電車の中で膝に置いて、気軽に読むものではないと痛感しましたね。
2 件のコメント:
こんにちは
毎日スゴイ湿気でヨレヨレになっています・・・
私、瀬戸内さんの小説はあまり読んでないのですよ。
行間からご本人のエネルギーが溢れ出ている様で、
軟弱な私は読んでるだけなのにぐったりしてしまいます(笑)
今でもテレビなどで拝見するとお元気ですよねぇ。
よーでるさん、瀬戸内さんの小説はかなり疲れるものが多いですね。これは出家前の本ですが、かなり出家を意識して描いたものではないかなと、感じました。
瀬戸内さんのあの生きるパワーには負けますが、でも最新作の「爛」ははっきり言ってつまらないです。帯の文句に負けて買ってしまいましたが(笑)、何回読んでも途中で止まってしまうほどですね。
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