先日、高島屋で竹久夢二展を見てから▼、夢二の人生に興味を持ち、図書館で夢二関係の本をいろいろと借りてきました。
画集が多かった中で、一番読みごたえがあったのが、林えり子著の「愛せしこの身なれど 竹久夢二と妻他万喜」という単行本でした。
新潮社から1983年に発行されたものです。
著者の林えり子さんという方は、この本以外にも、実在の人物のドキュメントを数多く手掛けていらっしゃるかたですが、読後感はかなりずっしりとしたものでした。
これは女たらしともいわれた夢二が、たった一回正式に結婚した相手の他万喜(たまき)さんのことを綴ったものです。
他万喜さんという人は、夢二より2歳年上で、最初の結婚相手とは二人の子供を産みますが、夫とは死別してしまい、そして子供を手放して、兄の住んでいる東京にやってきます。
そして早稲田にある「つるや」という絵葉書屋で働くのですが、そこで出会ったのが、まだ売れない画家の夢二でした。
他万喜さんは自分も画家の修業をしていたので、夢二の片腕となって、彼の絵を支えていきます。
そして夢二と一緒に生活をして、彼の子供を産みますが、やがて二人の関係は破れてしまいます。
それでも彼と離別した後も、彼の子供を産んでいました。
その後、彼女は何回ともなく引っ越しを繰り返し、家政婦となって働いたりして、64歳まで生きました。
夢二は感情が激しい人だったのか、あるいは自分好みの女性を求めていたのか分かりませんが、他万喜さんのことを「環」と改名させようとしたり、自分の主義主張を変えない人間だったようです。
そういう二人の関係は、大正というデモクラシーが発達した時代背景を無視せずにはいられないようでした。
彼女はだいぶ「悪女」だと言われていたようですが、大きなうるんだ瞳のかなり魅力的な女性だったようです。
平成の時代に生きていたら、どんな評価を受けていたでしょうか。
大正時代に、女性として自立して生きていくのは大変だったのだろうなと思いました。
この本は夢二のこと、そして彼のだった一人の正式な妻であった他万喜さんを通して、近代日本の女性の生き方について、考えさせられるものでした。
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