これまで源氏物語は何回も読んでいますが、それはあくまでも現代語訳。
原文で読むなんて、大学の教養課程で日本文学として選択した時以来、つまり半世紀ぶりということです。
それなのに、原文で読むというのに「参加ボタン」を押してしまったのは、生来のあまり物事を深く考えない性格ということと、やはり源氏物語の魅力の故でしょうか。
それにしても、日本文学専攻でもなかったのに、原文で読むのは無謀かなぁとも思ったのですが、着物友だちのKさんも参加するというので、気楽な気分で申し込んだのでした。
参加するためには源氏物語の原文のテキストが必要だというので、とりあえず図書館に出向きました。ところが置いてあったのは分厚い全集ものばかり。
さすがにこれでは持ち運びが不便だと思い、角川のソフィア文庫というのを見つけて購入しました。
これは原文の他に現代語訳や解説もついているし、値段も安く、文庫というだけあって、お手軽に持ち運びできるものでした。
さて文庫を手にして、自分で声を出して原文を読んでみたのですが、どこで区切ってよいのか分からない文章もあり、なかなか手ごわそうでした。
ストーリーを知っているから、なんとか分かりましたが、やはり難しい。
関が原方面の旅行中も、この文庫本を持参しましたが、新幹線やバスの中で読んでいると、すぐに眠くなってしまうのには参りました。
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会合は、自由が丘にあるマンションの一室で開かれました。
お部屋では、主催者である女優の真木野透子さんが出迎えて下さいました。
真木野さんは、ひと言でいうと、源氏物語を心から愛していらっしゃる方でしょうか。
まずは、これまでの会合で読んでいた物語の最初からのおさらいがありました。
光源氏を取り巻く人間関係や、登場する女性たちとの関係を説明してくれました。
そして、この時は「賢木」という巻のお話。
主人公の光源氏はまだ23歳ということですが、今の年齢にしたら30歳くらいかしら。
(今の年齢の7割くらいとして計算してみました)
すでに左大臣の娘と結婚もしています。
それにもかかわらず、数多くの女性たちとの恋愛関係を楽しんでいる状況です。
帝の息子であるし、イケメンでかっこいい御曹司です。
今回のヒロインともいうべき女性は、年上の未亡人・六条御息所。
彼女は30歳、一人娘で伊勢の斎宮になる女の子は14歳という設定です。
今でいうと彼女は42歳くらい、娘はハタチくらいかしら。
熟女の魅力のある女性です。
かつて東宮夫人であった御息所は、娘と一緒に伊勢について行くことにしました。
それを口実にして、年下の光源氏とは別れたかったのかもしれませんね。
彼のことを待っているだけの自分が辛かったのでしょうね。
でも逢えば名残惜しくて未練はあるのに、自分が振られるというのはイヤなのでしょう。
年上であり、教養もあり、プライドがある女性では、それは許せないのかもしれません。
当時の貴族の世界は狭い人間関係の世界でしょうから、けっこう噂になってしまっていて、彼女はなんとももどかしい思いなんでしょうね。
そんなお話が続く巻でした。
(文庫本のカバーは、キンゾウ商店のもの)
真木野さんは張りのあるお声で、原文をすらすらと読んでいきました。
さすが、女優さんですね。
そして分かりやすく説明してくれました。
自分一人で読んでいた時には、よく分からなかった場面も、情景が浮かんでくるようでした。
御息所の居るところ、光源氏の居るところなどの地理的説明もされたので、お話が具体的になってきました。
それにしても、源氏物語の文章というのは、主語が書かれていなかったり、書かれていても、しょっちゅう代名詞がコロコロと変わったりするので、これを的確に訳するのは難しいでしょうね。
これまで数多くの源氏物語研究者が研究しているように、どのように解釈するのが正しいか、という答えはないのかもしれません。
さて、まだまだ若い光源氏です。
これからもいろんな女性と知り合います。
その中では、私はちゃらんぽらんで明るい感じの朧月夜が好きですね。
また、私は、彼がもうちょっと年をとったころのお話が好きですね。
若い時は自分がお父さんの彼女とデキて、子供までなしてしまったのに、自分が壮年になってからは、反対に間男される立場になった頃のお話に、興味があります。
お父さんの苦悩が分かったのでしょうか。
ラブラブだった朧月夜にしても、最後は出家してしまって、光源氏を肩すかしをくらわしています。
著者の紫式部さんは、若い時にはモテモテだった男を、壮年になってからは女性たちから突き放されたような立場に追い込む物語にしたのは、紫式部もやるじゃん、と思ってしまいます。
当時はメールや電話はもちろんあるわけではないし、郵便もなく、お手紙(巻紙のようなものかな?)にサラサラと筆で歌を書いて、それを代理の人に渡して、相手の秘書というか女房というか、そういう取り次ぎに渡して、そして返事を待つ、というなんとも悠長な時代でしたよね。
そういう遥か千年も前のお話ですが、それを当時の人の言葉(原文)で読むことができ、また解説していただける、というのはまさに至福の時間ですね。
主催者の真木野さん、同席された皆さん、こういう機会を与えていただいたことに感謝します。
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この日の装い。
9月下旬にしては、かなり暑い日でしたので、絽の着物にしました。
紫式部にちなんで、単純に紫色の着物を選びました。
帯はろっこやさんのレインフォレスト帯。
ウエストが細く見える「目くらまし効果」がある、という愛用の帯です。
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