2009年4月22日水曜日

お琴の嫁入り先

母は娘時代から山田流のお琴を習っていた。

戦争中や、その後の結婚生活では子育て時代はお琴を中断していたようだが、私たちが巣立った後に、またお琴を習い始めたらしい。

お琴の先生に自宅に来ていただき、1対1で習っていたようなので、我が家にはお琴が2面ある。

ところがここ数年は、立てかけてあるお琴を横にするだけでも面倒になったようで、最近はまるで弾かなくなってしまっていて、お琴は押入れの天袋にしまい込んであった。


母がホームに入った後、いろいろな身の回りの品を片付けていたが、お琴だけは残ってしまった。
このお琴を何とかしなければ、と思っていた。

最近は中学校の音楽の授業で邦楽の勉強もしているので、どこかの学校に掛け合ったら引き取ってくれるかもしれない、と知人から言われた。

しかしいくら寄付するといっても、ちゃんと弾けるかどうかも分からない。


そこでお琴の演奏家の友人に、我が家までお琴を見に来てもらった。
そうしたら、まだまだちゃん弾けるという。

話がはずみ、彼女の友人でアメリカでお琴を普及させたいという人がいるので、その人に渡してもいいかという。そういうことならきっと母も喜ぶだろう。

というので、お琴2面をタクシーに乗せて、友人の家まで運んできた。

これで母のお琴の嫁入り先がなんとか見えてきた。


母が着ていた和服は、カナダで日本料理店を経営している人の奥さんに船便で郵送した。
手芸品は、刺繍作家の友人に引き取ってもらった。
俳画の材料はホームに寄付をした。
お琴はアメリカまで行くかもしれない。

そして私の手元には、三味線が2本と、桐の小さな箪笥が残った。
箪笥には針や糸、鋏を入れて置いてある。

こうやって、母が使っていたものの引き取り手が見つかったのは嬉しい。

それぞれの品が、それぞれの場所でまた活躍してもらえることを、期待している。

10 件のコメント:

日々是写真日和 さんのコメント...

素敵なお話ですね。最近は使い捨てが普通になって、第二の人生を歩むことが出来る品は少なくなっていると思いますので、受け入れられる方も喜ばれると思いますが、お母様の品々も喜んでいると思います。

諏訪ッチ さんのコメント...

着物がカナダ、琴がアメリカとは予想を超えた展開ですね。
日本文化そのもののような物が海外でまた活躍するなんて、物語になりそうですね。

おおしまとしこ さんのコメント...

日々是写真日和さん、そうですね、物をそのまま捨てることもできるのですが、やはりその物を分かっている人に使っていただけたら、嬉しいですよね。それと同時に私自身もあまり物を増やさないようにしたいのですが、どうしても増えてしまいます。

おおしまとしこ さんのコメント...

諏訪ッチさん、そうね、国際的な展開になるかもね。
母に「お琴がアメリカに行くかもしれないわよ」と話したら、喜んでくれたので、ほんとうにそうなるといいなーと思いますね。
私が弾けばいいのだろうけどね・・・。

マサ さんのコメント...

なんか、素敵なお話ですね。
思い出深い大切な品でも、使わないでしまっておくよりは、誰かの役に立ってもらったほうがいいですものね。

としちゃんは、お母さまの着物は着ないの?三味線を習っているから、着物を着る機会が、これから増えるのでは?

写真、青い空にピンクの花が、キレイですね。花ミズキ??

さと さんのコメント...

アメリカやカナダで活躍するなんて素晴らしいお話ですね。
ご縁ができることは嬉しいですね。
きっとお母さまもホッとされてるでしょう。

私の着物も将来どなたかが貰ってくれるかなぁ~
中々着物を着る機会が少なくなって箪笥の肥やしでもったいないわ。。。

おおしまとしこ さんのコメント...

マサさん、私は着物はだめなのよ。浴衣くらいしか着れません。着れたらいいのだろうけどね。
お花はそう、花ミズキですよ。うちの近くの街路樹は、白とピンクのが交互に咲いていて可愛いですよ。

おおしまとしこ さんのコメント...

さとさん、普段からお着物を着たらいいのに。素敵ですよ。
うちの母は、どういうわけか、道行というのかしら、上に着るものばかりたくさん残ってしまいました。最近、あまり道行は見ないですけれど、着物だけよりもいいですね。

トントン さんのコメント...

としちゃんらしい心遣い・・一つ一つがまた生き生きと活躍しますよね。
この頃、新しいものより、お下がり・・大切にされたものを使うとどこか自分も上等になった気がしていいものです。

おおしまとしこ さんのコメント...

トントンさん、コメントが遅くなりました。

「楽器は生き物だ」と思いましたね。
他の着物とか、家具などもそれぞれ思い入れがあるでしょうけれど、楽器は特にその人が可愛がって扱っていたものでしょうから、やはり分かっていただく人に使っていただくのが一番でしょうね。