前回の「悲愁中宮」に引き続き、安西篤子さんの「義経の母」を読みました。
面白かった!
小説、特に歴史小説を書く手段として、実在の人物のほかに想像上の人物を登場させて、その人に案内役をしてもらって、ストーリーを語らせるという手法がありますが、この小説は義経の母である常磐御前を語るために、彼女の初恋の男性「平太」を登場させています。
その男は平家の元に入ったため、常磐とは敵対する関係になるのですが、何かの時には常磐をそっと影から手助けしてくれる存在となります。
そのような、いかにも作り話的なところがうまくて、ぐいぐいと読ませてしまう小説でした。
お話は、美しく生まれたために、男に翻弄されてしまった女性・常磐さんが主人公です。
もともとは町の普通の女の子だったのに、人さらいにあって、貴族の家で働くことになり、そして最初は源義朝の妻となり、3人の男の子を産みます。それが今若、乙若、牛若です。
その後、義朝が殺されてからは、敵方の平清盛に可愛がられて、ここでは女の子を生みます。
しかし清盛の死去の後は、こんどは一条長成という男のもとに嫁ぎ、能成という子供を産みます。
つまり彼女は3人の男のもとで、それぞれ3人、1人、1人の合計5人の子供を生んだのでした。
しかし、彼女の相手の男性も次々に命を落とし、子供たちも亡くなったりして一人になってしまいます。そして50代半ばになった時、最初の初恋の男性と再会して、二人で生きて行こうというところでお話は結ばれます。
数奇な運命といえばそれまでですが、当時の女性は、男にすがって生きていくよりなかったのでしょうね。美しすぎる女性というのも男に目をつけられて大変なんですね。
それにしても、安西さんというかた、物語の作り方がすごくうまくて、読者の「こうなってほしい」という欲求をうまく取り入れてくれる人ですね。常磐の存在がとても身近に感じさせられるように書かれていました。
以前は常磐御前のことはあまり好きではありませんでしたが、彼女の人生を通して、この時代の流れを少しは理解できたような気になりました。
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