2015年1月8日木曜日

宮尾登美子 「錦」

宮尾登美子さんの訃報に驚いています。

最近、あまり新作にお目にかからないので、お年だからかなと思っておりましたが、もう宮尾さんの新しい作品を読むことができないのは、本当に残念です。
戦争中、戦後の動乱の時代を生きて、さまざまな波乱を乗り越えてきたご自身の生き方と、そして小説の中の女性の主人公たちのきりりとした姿が、重なって見えるような方でした。

私の大好きな作家さんでした。
「クレオパトラ」以外はすべて読みました。

ご冥福をお祈りいたします。

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ちょうど、年末から年始にかけて、宮尾さんの「錦」をもう一度、読み返していたところでした。


これは京都西陣の龍村織物の創始者・龍村平蔵をモデルにした小説です。

龍村平蔵は初めは帯の行商をしていましたが、その後、高浪織、ゴブラン織、絞結織など独特な織物を編み出し、また古代織物の研究や復元をしたことで名をはせ、数々の業績を上げた人です。

1回目に読んだときは、ただストーリーを追っていただけでしたが、2度目に読んでいて、はっと驚くことがありました。

それは、昨年の12月に、世田谷ボロ市で買った帯についてです。
これは、一見して古そうな時代物の帯でした。

買ったとき、売り手の人に尋ねたのですが、よく分からずにそのままにしていましたが、裏側の黒繻子に、なんとも不思議な文字が織り込まれていました。

中央に赤い字で「金陵」という刺繍が目立ちますね。

そして写真でははっきりと見えないのですが、左側には「如源」とありました。
右側には縦書きで、「諮明隆泰 如源鶴素」という漢文が入っていました。

これはいったい何なのだろうと思っていましたが、宮尾さんの本を読んで、これがそうだったのかと納得がいきました。

小説によると、当時流行っていた帯には、「如是」という文字が織り込まれていたのですが、主人公の吉蔵(龍村平蔵のこと)は「かくのごとし」ではつまらないと思いました。

そして、自分の帯らしさを出すためにこの文字を、「如意」にしようと考えました。
「こころのままに」という意味です。

それを機織りの職人に相談したところ、「如意ではなくて如源ではどうか」ということになりました。
如源は「須らく(すべからく)根源を見つめなければならない」という意味です。

ということで黒繻子の帯に「如源」と入れることになった、という話が出ていました。

それがこの「如源」だったのですね!

私は、右から書かれていたので、「源如」だと思っていましたが、反対から読むと「如源」ですね。

つまり、宮尾さんの小説に書かれていた「如源」になるわけでした!

すごい、小説に出てきた帯と同じなのでした。

ということは、この帯もかなり古い時代のもののようです。
明治時代ということはないでしょうが、戦前のものでしょうね。

この帯を、銘仙の着物に合わせて、お正月に締めてみたところです。


この帯は由緒ある帯かどうかは分かりませんが、龍村平蔵が生きていた時代と同じころの帯を締められるなんて、ありがたい気持ちになれますね。

そして宮尾さんの数多くの小説を、また読み返してみようという気持ちになりました。




4 件のコメント:

siroajisai さんのコメント...

松の内もすぎてしまいましたけれど
新年のご挨拶を申し上げます
今年もよろしくお願いいたします♪
宮尾登美子さんの訃報には気落ちいたしましたが、
でもこの帯のお話を聞いてすこし元気をいただいた気がします
歴史というのか、事実というのか
そういうことに繋がっているということが
本当に素晴らしいですね
龍村平蔵発、如源の帯のコーディネート
深緑の差し色も効いていて美しいです

としちゃん さんのコメント...

siroajisaiさん、こんにちは。
そして明けましておめでとうございます。
お正月は15日までは小正月ともいうそうですので、おめでとうと申しあげましょう。
いつも拙いブログをご覧いただきまして、
ありがとうございます。
コメントいただくと励みなります。

この帯は実際のところ、いつごろのもので、どこで作られたかは分かりませんが、そういう時代を経てきたもの、ということは納得がいきました。
かなりヨレヨレなのですが、可愛がってあげたいですね。

今年も着物ライフを楽しんでいきましょうね。




マサ さんのコメント...

宮尾さんの訃報には驚きましたが、老衰でなくなったことにさらに衝撃を受けました。けっこうなお歳だったのね。

としちゃんが購入した帯には、そんな物語があったのね。すごい帯に出会えましたね。
着物ライフを楽しんでいると、こんなこともあるのねと感動しています。

としちゃん さんのコメント...

マサさん、宮尾さんは88歳だったそうですね。
転倒されてから、具合が悪くなられたそうで、やはり老人にとっては転倒して骨折というのは、命取りなのですね。
うちの親もいつ転ぶか分からないので、それを思うとちょっと怖いですが。

帯にも着物にもそれぞれ物語があるのでしょうね。昔はよく分からずに、母の着物や帯を処分を処分していたので、今となっては悪いことをしたのかと、ちょっと反省しています。