2016年9月17日土曜日

脳の世紀シンポジウム 「食と脳」

先日、「第24回 脳の世紀シンポジウム 食と脳」▼に参加してきました。

このシンポジウムは1993年からスタートして、今年で24回目だそうです。
これまで「音楽と脳」、「スポーツと脳」など、興味深いシンポジウムを開催しています。

私は、以前は脳科学関係の仕事をしていたので、主催者からお知らせをいただいたこともあり、また講演内容も面白そうなので、期待して出かけました。


今回のメインは京都の有名料亭「木乃婦(きのぶ)」▼の三代目ご主人による特別講演でした。

美しい日本料理の数々をスライドで紹介されながらのお話を進められました。
このご主人は立命館大学で法律を学んだ後、吉兆で料理の修業をしたという経歴の方ですが、京都大学農学研究科の修士課程も修了されて、またワインのソムリエの資格もお持ちであるというユニークで素敵な方でした。

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて、海外の人もだしのおいしさにも気づいたというお話から始まりました。

京料理は、≪八寸、お造り、お椀、焼き物、揚げ物、焚き合わせ、ご飯≫という献立になっていますが、これも一つのストーリーになっている、ということでした。

そして料理人の思考回路は、「技術と知恵の結集」であると自信を持ってお話されていました。

会場からの質問で面白かったのは、「生野菜は料理と言えるか?」という質問に対して、生野菜だけでは料理でない、塩を振るとか、煮含めなどしてひと手間加えないと、日本料理とは言えない。つまり野菜にドレッシングをかけただけのサラダは、日本料理ではない、と言い切ったことでした。

ちなみに「木乃婦」のお食事は15,000円はするそうなので、そうそう気軽に行けるところではありませんが、一生に一度くらいは行ってみたいですね。

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2番目は生理学研究所の先生の「口の中で辛みと温度を感じるメカニズム」という講演。
専門的な用語が多くてちょっと分からないこともありましたが、唐辛子などの絡み成分を感じるのは、痛みを感じる温度と同じで55℃ということでした。つまり冷えた冷蔵庫に入っているカレーは辛く感じない、というのは実感がありました。

またアイスクリームにミントの葉っぱが乗っているのは、それはミントの主成分であるメントールは5℃で感じるので、アイスクリームをより冷たく感じさせるためにもミントが添えられているのだそうです。ふーむ、なるほどね。

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この後はお昼休みになりました。
食事を食べる気にはなれずに、かき氷をいただきました。
北海道の小豆使用ということでしたが、それほどおいしくはなかったな。
これを今年の夏最後のかき氷にはしたくない、という気持ちになりました。


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午後の最初は、国立精神・神経医療研究センターのお医者さんのお話で、「うつ病の予防・治療のための食生活と栄養」という講演でした。

現在、うつ病患者というのは全国には112万人もいるそうで、潜在患者も含むと500万人くらいいるのだとか。
そしてうつ病は肥満、メタボ、糖尿病などが原因で起こることが多いそうです。

うつ病を防ぐためには、魚などに含まれるエイコサペンタ塩酸(EPA)や、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを取り、またビタミンや葉酸、テアニン(緑茶やコーヒー)、ビフィズス菌などをバランスよく取るのが良いそうです。
当たり前と言えばそれまでですが、現代の食生活はバランスが崩れている、ということでしょうね。


その次は九州大学の先生が「味と匂いを数値化する」という講演をされましたが、早口でパワフルにお話になり、とても面白い内容でした。

食べもののおいしさは主観的なものですが、それを客観的に数値化するというお話でした。

酸味、甘味、苦み、塩味、うまみを数値化できる味覚センサーを開発して、ビールやワインなど、それぞれの銘柄で、どの味が多く含まれているかを分析するというのだそうです。
このセンサーはすでにいろいろな場面で実用化されているそうで、たとえばJALのコーヒーや、ローソンの食品にも応用されているそうです。
九州大学ではオリジナルの「鹿児島ハイボール」という飲料も販売しているそうです。

また人の年齢によって味の好みが変わり、たとえば赤ちゃんはビールは苦くて嫌いだが、大人になるとその苦みが好きになるというような当たり前の話も、面白く説明していました。

最後にユニークな「ハイブリッド・レシピ」の紹介をされました。
たとえば牛乳とたくあんを混ぜるとコーンスープの味になり、醤油ラーメンにバニラアイスを混ぜるととんこつラーメンになるということでした。

重さを測るためにはかりがあり、時間を測るために時計というものがあるように、これからは味覚を測るための味覚センサーは活躍しそうです。
また今後は触感(食べもののブツブツした感じやザラザラした感じ)なども数値化する必要であるということでした。

先生の思いは、「おふくろの味」や「伝統の味」を「食譜=食べ物の譜面」として記録して、未来に伝えたいということでした。

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最後は東北大学の女性の先生のお話で、「脳と脂質の良い関係~発生発達に必須の高度不飽和脂肪酸~」というお話でした。

脳というのは神経細胞が複雑な突起物を持っているため、けっこう脂っぽいのだそうです。
脳の中の水分以外の物質のうち、60パーセントは脂質なんだとか。
それで、ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸という脂質が必要だそうで、それらのバランスを崩した餌をマウスにやった場合の実験報告をされました。

かなり専門的なお話でしたが、簡単にまとめると、妊婦の取る栄養によって胎児の脳の神経細胞が減少するということに繋がっていて、これは子どもを産む女性には大切なことだと思いました。

いずれにせよ、人間の身体は、脳を含めて、口から入るものによって構成されているわけです。
食育の重要性を感じました。

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この日の装い。

雨の予報もあったので、濡れても良いように1000円のポリの無地着物です。
帯はろっこやのレインフォレスト。
(顔がちょっとコワイ!)


これだけだとあまりに寂しいので、紅型半襟と、玉ねぎの皮で染めた帯揚げをしてみました。
どちらも専門の先生に教えていただきながら、自分で作ったものですよ。




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