2016年11月3日木曜日

「安政大変」

私は幕末の大老・井伊直弼の話が好きなので、図書館で「安政大変」というタイトルを見ただけで、これは「安政の大獄」が描かれているとものと勘違いして、中身を確認しないで借りてきてしまいました。

ところがよく見ると「安政大変」でした。

むむむ!

「安政大変」は安政2年10月2日の夜に江戸で起きた安政大地震の前後の話を綴ったものでした。
なんとそそっかしいのでしょうね。

という笑い話がありましたが、この小説、実にうまい小説です。

出久根達郎さんの著書は初めて。


江戸時代の庶民の、ちょっぴり悲しくて切ない物語が7話、集められています。

地震を扱ったものが小説になるのだろうかと思いましたが、それが見事な短編になっていました。

時は幕末。
この当時は地震や大火事がとても多く起こったそうです。
町には不穏な雰囲気が漂っていた時代でした。

どのお話も、安政地震に関連した人々が主人公です。
夫婦、親子、恩人、商人、奉公人、摩訶不思議な薬売り、子供のいない夫婦、忘れられない人・・・・江戸で小さな暮らしをしている庶民たちの細やかな情愛が、大地震にあったとき、どう変わるのか。あるいは変わらないのか。

実際に熊本や東北で地震を体験された方が読まれたら、どんな気持ちになるか分かりませんが、いつの時代でも地震は突然やって来るという点では共通していることでしょう。

中一弥さんの挿絵が江戸情緒を高めてくれます。

人恋しくなるような短編集でした。



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