2012年2月26日日曜日

「江戸美人の化粧術」@ICU 2

さて、あこがれのICUでの公開講座は、湯浅八郎記念館▼というところで行われました。

大学の構内が広いのでうろうろしていたら、森の中に看板が立っていました。


ようやく記念館に到着しました。赤いレンガ造りの建物です。


湯浅八郎という人は、同志社大学の学長などもされていたクリスチャンだそうですが、もともとは昆虫学者だそうで、ICUの初代学長をされていました。

この記念館には民芸品や考古学関係の資料がたくさんあり、常設展示もしています。

また年に3回、いろいろな公開講座を開いているそうですが、織物に関することや生活雑貨などの歴史を取り上げていてとても興味深いところでした。
それも無料で公開してくれるのですから、嬉しいですよね。


今回は、「江戸の化粧道具」という展示に合わせて、ポーラ文化研究所▼の学芸員の津田さんという方が「江戸美人の化粧術」という講義をしてくださいました。

実は講演の前に洗面所に行ったところ、そこに粋な着物姿の女性がいたので、チラッとその姿を眺めさせていただいたのですが、その方が講師の津田さんでした。

年齢はだいたい私と同じくらいでしょうか。
黄色とこげ茶の格子柄の着物に白地に赤い花模様の素敵な帯を絞めたお姿でした。
髪はアップにしていて、ぐっと衣紋を抜いていましたね。

津田さんは、スライドや当時の本を読み下しながら、化粧の歴史をお話しされました。
出典は主に「都風俗化粧伝」(みやこふうぞくけわいでん)という文化年間に書かれたもの。


津田さんによれば、江戸時代というのは、「白・黒・赤」の時代なんだそうです。

「白」というのは、白粉のこと。
実物を見せていただきましたが、本当に小麦粉のように真っ白な粉でしたが、これには水銀や鉛も含まれていたそうなので、あまり健康にはよくなかったでしょうね。

右側の包みを開くと左側の紙が入っています。中身は吹けば飛ぶような粉でした。


この白粉を練って、刷毛で何回も顔に塗っては和紙などで拭いとり、という動作を繰り返し何回もしたそうです。
遊女さんほど真っ白にしていたそうです。

こちらは携帯用の刷毛と紅筆のセットですが、とても小さいのにコンパクトに作られていました。
紅筆も一緒にしまえるようになっていました。


当時の化粧法は「色の白いは、七難隠す」ということざわにもあるように、白いのが第一でした。
今のような肌色のファンデーションはなかったのですから仕方ありませんが、私のような色黒人間は江戸時代には駄目だったのですね。

この白粉を髪の生え際まできれいに塗るのが最高とされ、富士額や襟足の美しさを競っていたようです。

次の「黒」というのは、鉄漿(お歯黒)のことを指します。

鉄漿というのは既婚女性の象徴ですが、実は結納が決まるとその女性はすぐに鉄漿をしたそうです。
この材料は錆びた鉄、酢、酒、米のとぎ汁に「ふしの粉」というのを混ぜて作ったそうですが、実物はかなり臭い代物だったとか。
それを毎日、朝起きてすぐ歯に塗っていたそうです。

またこの当時の女性は子供が生まれると眉をカミソリで剃り落としていました。
そして公式の場にでるときなどは、眉の上のほうに置き眉というのをしたそうです。
上流階級の人ほど、眉は剃り落としていたそうで、お公家さんだと男性でも眉はありませんでした。

口は真っ黒、眉はない、というのは、今から想像するとかなりぎょっとするお顔だったでしょう。

さて「赤」は口紅をさしますが、これは紅花から作られていました。
しかし高級なものは、オリーブグリーンのような色で、「笹紅」といったそうです。
こちらの浮世絵にもあるように、下唇だけは緑色に塗っていますね。


今は口紅といえば、スティックタイプのものがほとんどですが、当時は小さな板のようなものに練り状に塗ってあり、それを筆で描いていたようです。あるいはお皿に紅を溶いて、それを塗っている姿の浮世絵もありました。

このような口紅や白粉などの化粧品は、江戸時代には役者のブランドとして販売されていました。
そのあたりは今とあまり変わらないのですね。
また当時から、今でいうマニキュアに相当するものもあったそうです。

また江戸時代でも女性の顔の欠点のカバー方法というのがいろいろ指南されていたようで、口の大きな人の紅の描き方なども絵入りで説明してありました。

このような江戸時代の化粧のお話は、とても面白かったですね。

私は江戸時代の小説が好きなのですが、その頃の女性もこういうお化粧をしていたのかと思うと、小説の中の女性たちも身近に感じられます。

この講演会には100人くらいの方がいらっしゃったみたいですが、男性もかなりいて、驚きでした。

展示会には、当時使用されていた鏡台、化粧品、櫛、簪などが展示されていました。

いつの時代も女性は美しさを求めていたということがよく分かりました。

(この項、続く)

2 件のコメント:

マサ さんのコメント...

この大学、確か、秋篠宮家の真子さまが通われているんじゃないんでしたっけ?
ホントに、アカデミックで素敵な構内ですね。こうした公開講座でもないと行くこともないでしょうから、いい機会でしたね。
白塗りに、そり落とした眉では、どんな美形でも間が抜けた顔になっちゃうと思うけど、そうでもなかったのかなぁ。
現代でも、眉は太くなったり、細くなったりしていますよね。バブル期のドラマを見ると、女優の眉の太さに笑えます。今は、ナチュラル志向かしらね。

おおしまとしこ さんのコメント...

マサさん、眞子さまはICUに通われているのね。結構遠いですよね。

この公開講座はた○くりでポスターを見たのですが、その時、是非行ってみようと思ったの。意外と近かったですね。昔はよくこのあたりを自転車で通りました。マサさんのおじょうさんのおうちはこの手前なんでしょうね。

大奥などのドラマも昔風のお化粧にしたら、みんな引いてしまうかもしれないわね。