2017年6月8日木曜日

染めもの あれこれ 3.長板中形の講演

染めものシリーズ3回目ですが、今回は体験記ではありません。
染めを仕事としている方の講演を聞いた際のまとめです。

先週、館林美術館に行った時▼、時間がたっぷりとあったので、美術館の資料や図書を見ていました。
その時、こちらのチラシが目に入りました。
「カタコトの会」▼展でした。


型紙を使って染めの仕事をされている人たちの、展示会と講演会があるというのです。
日替わりで、江戸小紋、秩父銘仙、伊勢型紙などの専門家がお話をされるということでした。
どれも興味のある内容でしたが、日時を考えると、「長板中形(ながいたちゅうがた)」の会に行ってみることにしました。

会場は上野と浅草の中間あたりにある「東京松屋」というところでした。
銀座松屋ではありませんよ。
なんと創業が元禄3年という老舗です。
ここは一階は「江戸からかみ」という唐紙屋さんで、その上がギャラリーになっていました。


会場に入ると、きもの上級者と思われる素敵な奥様方や、美しい令嬢方がいらっしゃり、ちょっとたじろぎましたが、畳のお部屋に座って、講演を待つことにしました。

講演者は松原伸生さん。
三代続いた長板中形の作り手の方です。


私は「長板中形」という名称は知ってはいましたが、詳しいことはよく分かりませんでした。

松原さんに言わせると、その定義は6.5メートルほどの「長い板」を使って、伊勢型紙を用いて、生地の両面に糊を置き、藍染めを施すもので、裏表に柄がある、浴衣の反物ということだそうです。
江戸時代に誕生した技法だということでした。

長いモミの一枚板を使うことから「長板」、中形というのは中くらいの大きさの模様(小紋よりも大きい模様)を作り出すので「中形」、と呼ばれるそうです。

ごく短くその手法を説明してみます。

長い板の上に張ってある白生地に型紙を乗せて、糊(もち米と石灰を混ぜたもの)を作り、彫った間にその糊をヘラで埋めていき、そこに色がつかないようにします。(防染)
これを片面だけでなく、両面にするのが他の型染と異なります。
形を置くとき、表裏の柄を合わせるときが、非常に難しいのだそうです。

表裏を間違えないように、表は朱色になっています。


そしてその布を乾燥させて、今度は藍で染めますが、その際には大豆のしぼり汁を使います。その布を伸子(しんし)という細い棒に指します。
そして藍染の液に平均に浸します。

簡単に書いてしまいましたが、これらはそれぞれ何回も行われ、また雨の日にはできないので、とても手間暇をかけて染められます。

松原さんの工房は、電化されているものは一つもなく、すべて手動で行われるそうです。
ものすごく手間のかかる作業だと思いました。

素晴らしい藍染の反物が出来上がっていましたが、こうなると美術品というか芸術品のようであり、気軽に着られる浴衣ではないような気がしました。

世の中は技術革新が進み、どんどん新しい技法が出てきているのに、昔ながらの技法を守っていくのは、非常に強い思い入れがあるのでしょうね。

伝統的な技法を継承するということは、面倒で単調な作業が多いと思いますが、それでも長板中形の技術を大切に保持していくのは、すごいと思います。

ただし、そうなってくると、希少価値が高まり、製品は非常に高額なものになり、買える人は限られてしまうのではないでしょうか。

ごくお金持ちだけがこのようなものを味わえるというのは、なんだか平等ではないようにも思いました。
機械化や電動化ができるところはできるようにして、もう少し多くのファンにも着られるようなものにしてもらいたい、と思うのは、無理な注文なのでしょうか。

伝統工芸を継続していくことは大切な意義があると思いますが、私自身はプリントの着物でも、インクジェットの着物でも、布の材質とか色などが気に入れば、それも悪くはないのだろう、と思ってしまいます。

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この日の装い。

かなり蒸し暑くなったので、しじらの着物にしました。


なんと1000円でした。
一昨年、「八王子娘」の「きものバトンマーケット」▼で買ったものです。

私は寸法があえば、1000円のものでも、1万円、10万円のものでも、それほど気にせずに着てしまいます。

白い帯は麻の帯ですが、手先もたれもどちらも長すぎて使いにくい帯です。
自己流で短くしましたが、それでも長い!



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