2019年3月9日土曜日

「能楽師四役!プラス One!」5回

先日は、「能楽師四役!プラス One!」最終回の講演がありました。
これまで能楽師のシテ方、ワキ方、囃子方、狂言方がそれぞれ登場されましたが、最後は能楽の大御所ともいうべき先生の登場でした。


増田正造先生は、武蔵野大学名誉教授の能楽研究者であり、90歳に近いご高齢です。
いかにも教養溢れるお姿でいらっしゃいました。
とにかく能のことに詳しい先生で、多くの著書を表されています。
私もそのうちの何冊かを読んでみましたが、能のことならなんでもござれ、という感じでした。


それでどんな内容なのか、ちょっと恐れ多かったのですが、なんと最初は車寅次郎こと「寅さん」の夢のシーンから始まりました。
寅さんが鞍馬天狗に扮して活躍するというビデオを鑑賞しました。
これは面白くて、大笑い。
若き日の倍賞千恵子もきれいでしたね。

嵐寛寿郎の鞍馬天狗も登場しましたが、この方の鞍馬天狗の映画は40本もあるのだとか。
美空ひばりが、角兵衛獅子の杉作に扮した場面もありました。

能の鞍馬天狗とは直接は関係はないのですが、やはり映画は親しみやすいですね。

こんどシネマ能楽「鞍馬天狗」の公演があるのですが、その直前レクチャーで映画と関連づけたのは、面白いと思いました。

他にも野村萬斎さんが鞍馬天狗に扮したテレビも見せていただきました。

ところで能の「天狗」というのは、僧であり、山伏なのです。
「天狗揃」という能舞台の場面は迫力がありました。
9人もの天狗が立派な衣装で登場して、橋懸りにずらりと並んだところはすごかったですね。

そして能の歴史的背景や、天狗の面についてもお話をすすめられました。
前に私がブログで「秘花」▼を書いたように、室町時代には男色は当然という社会で、世阿弥と義満の関係も現代とは違う感覚で捉えないといけない、というお話でした。
また能の天狗は、いわゆる「天狗の鼻」ではなく、「大べし見」と言われる面であるというお話もありました。

また能役者が一人前になるまでの、カリキュラムというものも教えていただきました。
最初は「子方」といい、「鞍馬天狗」の稚児役、そして面をつけないでシテを演じ、「石橋」で獅子を演じ、ツレになり、最後は老女役を演じるのだそうです。
やはり老女というのは、難しいのでしょうね。

実は私は「世阿弥の頃は、足元はどうだったのだろう」という疑問をずっと抱いていました。つまり現在の白足袋のような形は江戸時代以降のものだと思うのですが、室町時代にはどんなものを履いて舞台に上っていたのか、気になっていたのです。
ところが増田先生もそのことは分からないとおっしゃっていて、これからの研究材料だそうです。

そういえば、今から半世紀も前のことになりますが、高校の関西修学旅行の自由行動では、私たちは鞍馬山に出かけたのでした。
どんなところだったか、まるで記憶はありませんが、とにかく寒くて凍えていたことだけ、覚えています。
牛若丸はあんな寒いところで修行をしたのですね。

そんなことを思い出していたら、うつらうつらしてしまい、気がついたら講演は終わっていました。
一緒に参加されたUさん、Tさんも途中から眠ってしまったということで、きっと気持ちの良いお話であったと思います。

これまでのまとめ。

1回目・2回目▼
3回目▼
4回目▼
5回目▼

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この日の装い。

久しぶりに、青のタイシルクの帯を締めてみたい気分になりました。
この帯をする時は、たいてい青っぽい着物と組み合わせていたのですが、急に閃いて、焦げ茶の着物と合わせてみました。
世田谷ボロ市で見つけた小紋です。


意外といけそうですね。


やはり良い帯は、どんな着物にも合うということが感じられました。



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