先日に引き続き、また
日本橋の呉服屋さんのお勉強会に行ってきました。
今回は出席者が3名と少なかったので、勉強会というよりも、個人教授というか、普段は恐れ多くて触れないような貴重な布を自由に手に取り、触らせてもらいうという時間を過ごしました。
場所は人形町の駅から5分ほど歩いたところの中央区堀留町区民館というところの和室でした。

まずは前回に引き続き、着物のサイズの測り方から。
私のちょっとした疑問にも呉服屋さんはとても丁寧に答えてくれました。
畳の部屋に、所狭しといろいろな布を広げています。

こちらは男物の布地の説明をしているところです。

男の人の着物には身八口がない、というような身振りですね。
後ろの緋毛氈の上には、帯用の布が置いてあります。
そしていろいろな布を一枚一枚、説明してくれます。
布を見極めるには、こんなふうにしてマイクロスコープで見るのです。そうすると、縦糸、横糸の織り方や撚り方が分かるのです。

布地を拡大してみるとこんなふうに織り方が良く見えます。
これはちりめんですけれど、ちりめんにも「ひとこし」というのと「ふたこし」というのがあり、その違いも丁寧に教えてもらいました。

いろんな紋のことも教えてもらいました。

お公家さんの紋、武士の紋、お寺さんの紋などを「紋帖」という分厚い本から探し出しました。お寺にも紋があるというのは知りませんでしたね。
すごく凝った紋もあるし、シンプルな紋もあるし、見ていて飽きないですね。
こちらは楽しいお遊びのまねごと。光琳の絵柄のうちから、好きな絵を描いて誂えるという究極の贅沢を味わってみました。

この本から選びます。
梅や撫子、かきつばたなどのお花や、宝づくしとか松などのおめでたい柄、波や雲などの自然風景を直径数センチの紙に描きます。その丸い紙を着物の好きな場所に置き、そしてその場所のその絵を描いたり、刺繍をするそうです。自分だけのオリジナルの着物ができるのですね。

これは波と舟かしら。
いかにも琳派らしい鶴や鹿や獅子などの絵柄もありましたよ。
可愛い小花も。

こうやって着物に絵の描かれた紙を置いていきます。

今回の参加者は着物に凝りだして6年、というおしゃれな男性がいたので、男の人の着物のこともいろいろと教えてもらいました。
話を聞いているうちに、10年ほど前に亡くなった父の着物のことを思い出してしまいました。
父は会社から帰るといつも母の手縫いの着物に着替えてリラックスしていました。
好きな囲碁に通う時も和服姿だったし、お正月はちょっと改まった着物を着ていたし、寒い時はトンビというオーバーのようなものを着ていたことなども思い出しました。
着物というのはいろいろな思い出と結びついていますね。
他にも博多織りにはクラスがあって、ラベルの色で見分けるとか、上等な金糸の織り方とそうでない金糸の織り方とかいろいろ教えていただきました。
私にとっては着物のことを学ぶというだけでなく、源氏物語のお姫様が着ていた衣装も思い出すことができるし、平家の娘たちや江戸の奥方の衣装を思い浮かべたり、長唄も関係してくるし、琳派の絵のことにもつながっていたりして、自分の好きな世界が深まっていくのは、とても楽しいひと時です。
それにこの呉服屋さんは絶対にここでは販売をしない、というので安心して参加することができるのはいいですね。
そんなふうにしていたら時間のたつのも忘れてしまい、人形町の駅に着いた時にはもう真っ暗になってしまいました。