有吉佐和子さんという人はほんとうに才能溢れる人だったと思うわ。
今度は「地唄」という短編小説集を読みましたけれど、ここに登場する人物はみんな和の文化の世界の裏方さんばかり。
地唄舞の三味線弾き、着物に墨絵を描く絵師さん、歌舞伎の黒子、人形浄瑠璃の人形遣い、よくもまぁ、こういう世界のことばかり書くものだと感嘆しました。
どの話もその職業についてものすごく詳しく書かれていて、いったいどこでそういう世界を知ったのかしらと不思議に思うほどでした。
文庫本のあとがきには、有吉さんは東京女子大の学生時代、歌舞伎研究会に属していたので、歌舞伎のことに詳しいと書いてあったけれど、たかだか女子大生の趣味のサークルにいただけで、これだけ特異な世界のこと書けるわけはありませんよね。
有吉さんはきっとものすごい量の取材をしていたと思うの。
でも書かれたものにはそんな苦労はまるで感じられずに、もともとこういう世界で生まれ育ったかのように書いているのがすごいと思います。
やはり天才なのでしょうね。
その後に読んだ「連舞」という小説は日本舞踊の家元の家に生まれた姉妹の話だけど、こちらはちょっと通俗的で世間受けを狙ったような小説で、あまり好きになれませんでした。
物語は戦争前後の話なのだけれど、戦前や戦中のところはとても面白く読みました。
でも戦争後のどさくさの中、日本舞踊を復活させようとして舞台でストリップまがいの踊りをして舞台を見る人をあっといわせるなんていうストーリーで、ちょっとウソ臭いかな。
それにしても有吉ワールドに入ってしまうと、どんどん引きこまれていくのです。
ほんとうに天才という人は早死にするわね。
2 件のコメント:
有吉さんは、いわゆる花柳界を扱った小説が多いみたいだけど、「恍惚の人」とか「複合汚染」などの作品で社会派と呼ばれた側面もありましたよね。才能に溢れた女性だったのね。
有吉さんの亡くなった年齢を越えてみると、ずいぶん早い死だったんだなぁ~と、つくづく思います。書き尽くしてはいないでしょうに。
そうね、本当に守備範囲の広い人だったと思いますね。「香華」は芸者の母子の話だったけれど、面白かったわね。
あと「華岡青洲の妻」もすごいですね。
ああいう人が今生きていたら、今の原発事故をどのように指摘していたかとも思うわ。
ストーリーの展開も面白いし、取材もすごいし、すごい小説家だったと思うわ。
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