気に入った本は、二度読みをすることが多いですね。
私の場合、最初はストーリーを追うだけで終わってしまうので、2回読んでようやく話が見えてくる、ということがあります。
二度読みして、ようやく少しは分かったのは平岩弓枝さんの「魚の棲む城」。
実は、「水鳥の関」を読んで▼、また読んでみようと思い出したのです。
これは江戸時代の田沼意次が主人公のお話です。
田沼意次は、日本史の授業では賄賂政治をした悪者政治家というイメージがありますが、実は彼の経済政策(新しいお金の制度、印旛沼の開拓など)はよく考えられていたものだということが、分かりました。
タイトルにある「城」というのは、今の静岡県牧之原市あたりに建てた相良城のことです。
ただしこの城は、田沼意次の政敵であった松平定信がぶっ壊してしまったとかで、現存していません。
跡というのが残っているだけのようです。
田沼意次という人は、歴史上の人物の中ではたぐいまれなるハンサムだったそうで、それだけでかっこいいのに、幼馴染だった女性が人妻になってからも、それでも恋しくて彼女を奪ってしまうという情熱的な男でした。
その人妻・お北さんとの間に生まれた不義の息子を見守っている姿は、物語とは言え、ほんとに男としてほれぼれするような立場だと思いました。
お北さんは、中年になってからは意次のよき相棒として傍にいるようになり、彼の政治サロンのようなところで才能を発揮するようになりました。
実は彼女には病身の夫がいたのですが、彼を振り切って意次の元に走る彼女の生き方も、潔くてかっこいいなと思いました。
物語にはもう一人男性の幼馴染も登場しますが、彼も町人として、意次を支えるようになります。
それだけ意次が人間的にも政治的にも優れていたのだろうと思いました。
このお話は、ドラマ化されたらいいなと思います。
こちらも二度読みしたものです。
同じく平岩弓枝さんの「はやぶさ新八御用旅 東海道五十三次」。
これはシリーズもので、隼新八郎の一行が、殿様の秘密の任命を受けて、東海道を下るという話。
その秘密の御用というのは、東海道を下るあるお姫様をお守りするということ。
ところがそのお姫様というのが、誰だか分からなくて、振り回されます。
おまけに途中にはいろいろな災難が待ち受けていて、ハラハラさせられるというお話です。
これもやんちゃな新八がかっこいい。
この本を読み返そうと思ったのも、先の「水鳥の関」周辺のことがどのように描かれていたかを、もう一度確かめたかったから、という単純な理由からです。
私が鰻を食べたあたりで、彼らも鰻を食べていた場面があり、浜名湖のあたりは江戸時代から鰻が有名だったのだなと思いました。
ただしこの小説は、登場人物があまりに多すぎて、誰が誰だか分かりづらいのは、2回読んでも同じ感想でした。
そしてこちらも2回目でした。
瀬戸内寂聴さんの「白道」。
若くして出家して、そして歌人としてもたくさんの歌を残した西行についての話です。
しかし何回読んでも仏教関係のところは難解で、よく分からないところがたくさんありました。
また私は和歌はまるで分からない世界なので、和歌の部分はぶっ飛ばして読んでしまいました。
それでもハンサムでスポーツマンで蹴鞠なんぞもできる武士の若者が、高貴な方に恋してそれがもとで出家して、そして死ぬまでずっと彼女のことを思い続けてたくさんの和歌を書いた、というのはちょっと無理があるかもしれません。
20代前半の気持ちが、70歳過ぎまで続くものでしょうか。
そして西行はあちこちに旅をしながら、多くの人と付き合いながら、たくさんの和歌を残します。
不思議な人であると同時に、やはり魅力的な生き方をした人なのだろうと思います。
1995年の作品なので、ちょうど寂聴さんご自身が、西行が亡くなった年の頃に書いたものです。
彼と同じように出家した人ではないと分からないだろうな、と思うことがいろいろありました。
西行の歩いた道をたどる寂聴さんの怨念が伝わってきました。
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上の本は意識的に二度読みしたものですが、前に読んだことをすっかり忘れてしまっていて、途中になって「あれ、この話、知っている!」と思う本もあります。
ちょっと情けない話ですが、それでも本を読むのは楽しいので、読み返すようにしていますが。
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