浜松まで一泊旅行に行ってきました。
着物のイベントに参加するためでしたが、もう一つ理由があったのでした。
それは、私の愛読書の舞台となった浜名湖に行くことでした。
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その小説は、平岩弓枝さんの「水鳥の関」です。
簡単に言ってしまうと、江戸時代のラブストーリーです。
浜名湖の東西にある関所や本陣が舞台になっています。
その関所跡や本陣・脇本陣跡をじっくりと見物してきました。
江戸時代にタイムスリップしたようで、とても満足できました。
東海道・新居宿の本陣の娘の美也がヒロインです。
新居宿は東海道五十三次の31番目の宿場町です。
本陣というのは、江戸と国元を行き来する大名などのおエライさんが宿泊する宿屋。今でいうと、皇室御用達の高級ホテル、といった感じでしょうか。
美也はある武家に嫁いで子供を一人産みますが、夫が若くして亡くなってしまいました。
すると婚家からは「おまえは実家に戻れ。ただし子どもは後継ぎだから置いていけ」と言われて追い出されてしまいます。
その後、たまたまその亡き夫の弟と再会したところ、お互いに魅かれあって、美也はまた身ごもってしまいます。
ところがその弟は江戸に行くことになり、分かればなれになり、彼から捨てられたと思い、美也はまた実家ってきて、義理の弟の間にできた子供を育てながら、本陣を切り盛りすることになりました。
弟を追いかけていきたくても、そこには厳しい関所があって、簡単に江戸に行くことはできません。
東海道の関所は通過するのが難しいということで、姫街道と呼ばれる裏道を通って行こうとしましたが、そこにある気賀の関所でも通せんぼをされてしまいます。
美也の人生はその後も波乱があり、他の男から言い寄られてしまいます。
美人のヒロインなので、周囲にはいろいろな男性が登場してきて、それはそれで良いのかもしれませんが、当時の女性は一人で自由に旅行することもできず、また自分の意志を貫くことは難しかったのです。
上下2巻のかなり長い小説なのですが、私はこのような女の一生を描いた時代小説が好きなのです。
湖の水鳥は自由に水の上を渡っていけるのに、ヒロインにはこの関所のために人生を遮断されてしまったのでした。
たった2里ほどの湖の東西ですが、関所の存在が重くのしかかっていたのでした。
私はその両方を自由に行くことができました。
そういう意味では、よい時代に生まれたものだと感謝しています。
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