2023年2月8日水曜日

山崎豊子の本

最近は山崎豊子の本を立て続けに読んでいます。

去年の年末、いつも借りている図書館が情報システム変更のため、長期休館となりました。その休館期間を利用して、長編ものを読んでみようと思いました。

ということで「不毛地帯」の全5巻を借りてきて、お正月から年始にかけて読み続けました。山崎さんの小説は「大地の子」や「沈まぬ太陽」などは読んでいましたが、「不毛地帯」は1巻だけで挫折していましたが、また読み返すことにしました。

最初の1巻目はシベリア抑留の話ですが、あまりに悲惨で読むのが辛くなりました。主人公の男性は、11年の抑留を経て、日本に帰国。その後は商社マンとして世界を股にかけて大活躍。こんな男は本当にいるのだろうかと思っていたら、ちゃんといたのですね。関東軍の参謀で、伊藤忠商事の社長だった瀬島龍三がモデルだったそうです。

この小説はスケールが大きくて、戦争や敗戦後の様子、そして昭和の高度成長時代を思い起こさせるには素晴らしい小説でした。経済界の話のみならず、政界の裏話もたくさん登場します。色々な裏取引についても語られていて、本当にこんなことがあったのだろうかと思いましたが、あらゆるタブーに挑戦する作者の姿勢に圧倒されました。私は商売の取引などには疎いので、理解できない部分もありましたが、非常に勉強になりました。

ただし、当時の男性はほとんどがタバコを吸っていたこと、「女は短大くらいを出て、お嫁に行くのが一番」と考えられていたことなど、あまりに現代とは異なる価値観の世界でした。またあの頃の情報伝達手段は固定電話しかなく、今の状況とはかけ離れていることは仕方ありません。それにしても重厚な内容でした。


その後は「仮装集団」という小説を読みました。これは労音がモデルと言われる音楽の団体《勤音》を扱っています。主人公の男性は単に音楽が好きなだけで、とくに政治的な意識はないのですが、団体としては共産党支持であり、その団体を潰そうと目論む経済団体との対立などが描かれています。また《勤音》というの組織中でも、中国寄り、ソ連寄りの対立があったことなども描かれています。音楽を舞台に乗せるための裏側には、こんなことがあったのかと、思い知らされることも多くありました。

発行が昭和40年なので、私は高校生になったばかりでした。あれから半世紀近く経ちましたが、現在でも音楽を興業するのは、こんなに大変なのでしょうか。


現在は「花紋」という小説を読みかけています。これは大正時代に歌壇で活躍した石上露子さんという実在の女性をモデルにしているようです。

これから宿命の恋愛話が始まるところです。



以前、山崎豊子の秘書だった野上孝子さんの本を読んだことがありますが、とにかく山崎さんの取材はすごかったようですね。足で歩いて、目で見て、確かめたことをもとに小説に仕立てていく。その過程には障害もたくさんあったようですが、パワフルで気持ちの強い方だったのだろうと思います。

私は今の作家の小説はあまり読みませんが、自分の足で歩き、命をかけて取材した小説はやはり素晴らしいと思います。

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「一日一句」

春の夜に 小説で知る 昭和かな



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