2023年6月23日金曜日

「源氏物語を楽しむ会」 2023年6月 59回

今回の「源氏物語を楽しむ会」は、光源氏と玉鬘(若い時に付き合った彼女が、他の男性との間に産んだ子供)が和歌をやり取りする場面でした。

平安時代は、和歌の上手い下手、文字の上手い下手でその人のレベルが上ったり下がったりしていたのですが、さて玉鬘は源氏の試験に合格したでしょうか。

源氏は、まずこんな歌を玉鬘に伝えます。

「知らずとも尋ねて知らむ三島江におふる三稜(みくり)のすぢは絶えじを」

これは玉上琢哉の現代語訳では、「なにゆえかご存知なくとも、やがて誰かに聞いておわかりになるでしょう。三島江(淀川右岸。大阪府高槻市)に生えているみくりの筋のようにご縁は続いていましょうから」となっていました。

これに対して玉鬘は、

「数ならぬみくりや何のすぢなればうきにもしもかく根をとどめけむ」

という返事をします。なかなか上手な字で書かれていました。

現代語訳では、「物の数でもないこの身はどういうわけで、みくりが水底に根を下ろすように、この辛い夜に生まれてきたのでしょう」となっていました。

彼女は源氏の歌をうけて、「みくり」という言葉を入れて詠みました。また「うき」は「憂き」にかけてあり、「みくり」「うき」「根」は縁語(意味上、縁のある言葉を使って歌文にあやをつける表現。和歌の修辞技法の一つ)なので、かなり高度なテクニックの和歌で返答したのでした。

これを見て、源氏はきっと満足したと思います。

さて、この和歌の中で「みくり」という言葉が使われていますが、さて、みくりとは何でしょうか?

みくりは、こんな植物です。

(ウィキペディアより拝借しました)

みくりは「三栗」とも「実栗」とも書かれるそうですが、沼や池などに生える植物です。

日本だけでなく東南アジアに生息しているのだとか。

夏になると、水中からまっすぐに茎が伸び、棘のある球状の栗のいがに似た突起物が生えるそうです。そのため実栗と名付けられているそうです。

根は漢方の生薬にもなり、腹痛や胸痛に効用があるとか。

また茎は、すだれやむしろの材料として活用されたそうです。

このみくりは、清少納言が書いた「枕草子」にも登場していて、当時としてはよく知られた植物だったのかもしれません。

ただし現在は、湿地の開発や河川改修でコンクリート化されているので、みくりは準絶滅危惧種となっているそうです。

源氏物語はおよそ1000年前に書かれた物語ですが、その頃の植物もいつかは消えていくのでしょうか。

源氏物語の研究対象は、物語そのものだけに留まらず、当時の装束や食べ物、婚姻関係などいろいろありますが、源氏物語と植物の関係を研究している人もいるので、ちょっと驚きました。

今回は、足のケガでお休みをされていたSさんが久しぶりに参加されました。最近、私の周りでケガをする人が多くなりました。私もこれ以上、ケガをしないように気をつけなくてはね。


*******

この日の装い。

雨の予報だったので、ポリの着物にしました。

結果的には雨は降りませんでしたが。


帯はだいぶ前に神社の骨董市で見つけたもの。

帯締めは自作です。実物はもう少し水色と黄色がはっきりしています。

*******

「一日一句」

水草や 千年前の 恋の歌


0 件のコメント: