最近読んだ本、あるいは読んでいる途中の本の覚え書です。例によって、とても偏りがあります。
絲山秋子著 「末裔」
書名は《まつえい》と読みます。
一人の中年男、この人は役所勤務のどこにでもいそうな、さえないおっさんです。その彼が、次々におかしな状況に引き込まれていきます。ストーリーは、不思議な雰囲気が漂っています。どこまでがほんとうか、あるいは幻覚なのか判らない話ですが、中年男性の心理と行動が、よく描かれています。
タイトルの末裔、という言葉の意味も次第に解きほぐされていきます。ミステリーではないのに、ミステリアスなお話が続きます。
作者の絲山さんのことは、芥川賞受賞された人、くらいしか知りませんでしたが、私の好みに合いました。まだ全部読み終えていませんが。
内田宗治著「ゼンリン 住宅地図とネット地図の秘密」
これもまだ途中までです。発行が2014年と少し古いのですが、面白い内容です。
ゼンリンの住宅地図というのは、交番でおまわりさんに場所を尋ねたときに説明してくれる大きな地図です。すべての民家の名前や、ビルの名前が記載されているものです。
足で歩いて稼ぐ超アナログスタイルのゼンリンの住宅地図と、いつもお世話になっているネット地図についての裏話がたくさん書かれています。
ゼンリンという会社はもともとは別府の温泉街でお店の人向けに作ったのが最初だそうで、社名は「善輪」という字を使っていたとか。
それがだんだんとコンピュータシステムになっていく様子が描かれています。
会社の企業努力が分かり、面白いですね。なにしろすべての道を歩き、表札で名前をチェックするのですから。ほんとにアナログの世界です。
こちらは、私の定番の作家のもの。
林真理子著 「綴る女 評伝・宮尾登美子」
林真理子さんは、最近は日大理事長としてマスコミに登場していましたが、彼女はやはり文字の世界の人でしょうね。
この宮尾登美子の評伝も、数多くの縁者と会い、普通なら書きにくいことも、ズバリと書いています。さすがに作家だな、と思いました。
これをまず読んで、そして宮尾さんの「櫂」を再読したのでした。
宮尾登美子著 「櫂」
最初にこの本を読んだのは、まだ若いときでした。この本の主人公は宮尾さんのお母さんに当たる人の話です。
慣れない環境で生き、他人が生んだ子供を育て、自分の息子は若死に、夫は離れていく、そんな人生の苦しみにもがいている様子がたくさんあり、読んでいて苦しくなるような場面もありました。
それでもNHK朝ドラ「らんまん」で話されていた高知弁があちこちに散らばっているので、その苦しい気持ちも救われたようでした。
何回もドラマ化されているようですが、今の女優さんが演じても、ぴったりこないだろうと思います。
朝井まかて著 「阿蘭陀西鶴」
浅井まかてさんの本はどれも力作ぞろいで面白いですが、この本も井原西鶴のことを盲目の娘からから眺めたお話です。
だいぶ前に読んだので詳しいことは忘れましたが、盲目でも料理や裁縫も一人前。井原西鶴が生きていた時代の出版事情、彼のライバルたちの話、父と娘の交流などが、丁寧に描かれています。
最近、読むスピードが遅くなりましたね。老眼の影響でしょう。
読書専用の手元眼鏡が必要になったのかもしれません。シニアグラス、というのでしょうか。
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