2008年9月3日水曜日
二つの絵巻
今日は○○市で開催された待望の「源氏物語の1000年 -あこがれの王朝ロマンー」講演会に行ってきたの。
お仕事を休んで出かけたんだけど、すごくよかったわよ!
講演は2時からだったの。
私は図書館にも用事があったので、だいぶ早めに会場に到着したの。
そうしたらまだ1時前だというのに、入口にはずらりと人が並んでいるの。
えー、この市にもそんなに源氏物語ファンがいるとは驚きよ。
それで私も図書館に行くのは後回しにして、入場することにしました。
今回の講演の講師は五島美術館の学芸員である名児耶明さんという方。
この方の経歴を見たら、なんと私と同じ年なの。
おまけに私が入学試験で落とされた某大学の卒業なのよ。
私も受かっていたら同級生だったというわけね。
この方、学芸員というお固いイメージとは違って、お話がすごくお上手で軽妙洒脱。
ちっとも飽きさせないお話ぶりでした。
<かなのお話>
今回の講演は、もちろん源氏物語千年記念行事でもあるのだけど、話の内容は物語の説明というよりも、源氏物語絵巻と紫式部日記絵巻の解説。
それも絵巻の絵の部分(「大和絵」というそうです)ではなくて、文字の部分に焦点を合わせたものだったの。
というのも、この学芸員の方の専門がかな文字だというので、まずはひらがなの歴史などをお話してくださいました。
ひらがなが日本に登場したたのは西暦900年の頃で、ちょうど紀貫之が活躍していた頃らしいの。
その後、いろいろな変化があるのだけど、紫式部が源氏物語を書いたというのはそれから約110年後。
そして平安時代が終わる12世紀の末ごろまでに、書体がだんだん変化していったそうなのよ。
かなが完成したのは、ちょうど藤原定家が活躍していた時代だそうです。
かなは時代により、主に5種類に分類できるそうなの。
文字の線の太さ、細さ、文字の続け具合(重ね)、文字の配置具合(散らし)、墨の濃淡などで分けるそうよ。
くにゃくにゃしていて、何が書いてあるのか分からないかな文字の研究というのも奥深いものなのね。
そういう地味な研究を続けるのって、偉いわよね。
源氏物語というのはひらがなが発明されていなかったら、生まれることのなかった物語だったという説明に、思わずうん、うんとうなづいてしまったわ。
だってひらがなというのは女性が使うものだったから、その頃、漢字しかなかったら、紫式部の手による源氏物語は生まれていなかったんですものね。
それにしても、ひらがなが登場して100年くらいしか経たない間に、こんな長編の文学が登場するというのも、すごいわよね。平安時代にひらがなが登場しなかったら、私たちもいまだに漢文の世界にいたかもしれないんですものね。
講演はたくさんのスライドを見せていただきながら、お話が進みました。
「源氏物語絵巻」というのは有名だけど、「紫式部日記絵巻」というのはあまり聞いたことがなかったの。
でも紫式部日記絵巻には藤原道長が紫式部の部屋を訪ねる場面とか、紫式部が誰かの赤ちゃんをあやしている場面とか、そういう現実的な絵もあって面白かったわ。
それに意外だったのが、源氏物語絵巻といっても、絵の部分より文字の部分のほうが3倍くらい多かったこと。
なんとなく絵巻というと絵だけの巻物という感じがしていたんだけど、文字の部分がすごく多いのよ。
前に京都で見た山口伊太郎さんの源氏物語絵巻西陣織展も、文字の部分もちゃんとしっかり織り込んであって驚いたけれど、そのくらい、絵巻には文字が多いのよね。
<2000円札の裏話>
学芸員の話は面白かったのだけど、一番「え~!」と思ったのは2000円札のお話。
2000円札の表は守礼門の絵が描いてあり、裏には源氏物語の絵が描いてあるというのはご存知よね。
ところがどうして源氏物語が選ばれたかというと、ちょうどその時、サミットを京都で開催する計画があったんですって。それで京都に関係の深い源氏物語が決まったらしいのよ。
ところがどうしたことか、実際にはサミットは沖縄で開催されてしまったでしょ。
でも源氏物語の絵を載せるというのはそれより前から決まっていたから、裏側に載せたんですって。
また、今年のサミットは北海道の洞爺湖で開催されたけれど、これも本当は京都で開催されることになっていたんですって。
それで京都や滋賀県では大々的に源氏物語千年記念をサミットに合わせて開催することになったらしいのよ。
ところがまたしても京都での開催はおじゃんになってしまって、源氏物語千年記念行事だけが残ってしまったというわけ。
そんなことで、源氏物語はサミット開催とも深い関係があるというお話でした。
<素敵なプレゼント>
今回の講演会に参加者多かったというのは、実はこの講演会に行くと、横浜美術館で開催されている源氏物語の展覧会の入場券をプレゼントされるという理由からかもしれないわ。
だって入場券はまともに買うと、ひとり1300円なのよ。
それを講演会に行くとただでもらえるんですもの。
お得でしょ。
入場者を500人として、費用は全部で65万円。
そういうことに税金を使ってくれるのは大賛成よ。
そりゃ、子供の病気の予防接種とかお年寄りの介護のために税金を使うのも必要だけど、子供やお年寄りばかりではなく、普通の人にも市からの恩恵があるほうがいいじゃないの。
市も太っ腹なことをしてくれて、すごく嬉しいわ。
最後に学芸員が話したことがすごく印象的だったの。
それは「日本の文化を知る」ということ。
つまり、海外に行った時なども、「アメリカに行ってジャズの話をしても仕方ない。」とおっしゃるのよ。
それよりか自国の文化を語れるようになりなさいというの。
日本人が、日本で発明した「かな」のことを語り、日本女性が描いた世界最古の文学を語るのが、いかに文化を伝えることになるか、というの。
この千年の間に語り継がれてきた源氏物語を知り、当時の人々の心情を思う。
そういうことが、自国の文化を大切にするってことかもしれないわね。
今日の講演会ではとても幸せな気分になれたわ。
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8 件のコメント:
待望の講演会、幸せな気分になれてよかったね!
源氏物語千年紀の背景もわかって面白い。
しかし京都でサミットだと警備の問題が難しいわね。交通はストップするし、洞爺湖のように山の上にあるとことか離れないと都会では厳しいね。
宇治のミュージアムもリニューアルされたようで寂聴さんが講演をされたと昨日ラジオで言ってました。
秋にもまた色んなイベントがあるとおもいます。来てね!
さとさん、たしかに京都でサミットをするのは大変でしょうね。
宇治のミュージアムに行ったのもだいぶ昔のことになってしまいました。今、宇治十帖のところを読んでいるの。薫が煮えきらなくて、いらいらしちゃうわ。
2千円札の裏話を読んで、思わず引き出しから2千円札を取り出し、まじまじと眺めました。そんな事情があったなんて、ちっとも知らなかったわ。
それにしても、2千円札は流通してませんよね。郵便局では、おつりをよく二千円札でくれるの。目にすることの少ないお札だから、なんか使いにくいわ。
マサさん、私も2千円札のお話を聞いたときは、びっくりしたわ。おまけに、お札に描かれている紫式部と思われる女性の姿も、100%当人とは言えないらしいの。それでもこの学芸員が「これ!」と言って決断したそうよ。
2千円でお釣りをくれると、あれって思っちゃいますよね。日本中には2億枚流通しているとかいうお話でしたけれど、めったにお目にかかれないわね。
よいお話を聞けてよかったですね。
私は知らなくて行かなかったのだけれど、としちゃんのこのブログを読んだだけでも、ちょっと知識を得て、得した気持ちになりました。
自国の文化を語れるようになりなさい。っていい言葉ね。まだ間に合うから心がけようと思います。
紅蓮さんみたいにプロの物書きの方にそんなことを言われるとくすぐったいわ。でもちょっと知識のお裾分けをさせてもらいました。
紅蓮さんもヨーロッパに行って、日本の良さもきっと感じたと思うわ。
最近アニメーションやコスプレが、日本の文化の代表みたいになっているのは、なんとも寂しいね。
でも、さて私は何を語れるだろう?
勉強しなくてはいけないね。
諏訪ッチさんは、諏訪を語ってくださいな。
信州のおいしい食べ物や、きれいな自然を多くの人に語り、写してほしいわ。
アニメの好きな政治家が総理大臣になったら、ちょいと困ることもあるかもしれないわね。
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