先日、「ひらやま談話室」に行ってきました。
ここは、
カリスマ和裁士の平山さん▼の作業場所なのですが、月に一回、そのスペースを開放して、着物好きな方たちに集まり場所となっています。
平山さんとは、
「八王子ゆかた×さんぽ」▼の時に初めてお目にかかりました。
「着物のことならどーんと任せて」というオーラを出していらっしゃる方ですが、気さくな雰囲気もあり、どういうところでお仕事をされているのか興味があったので、電車を乗りついで出かけてみました。
そこは、元住吉の駅から近いところにありました。
お部屋の入り口で500円を払うと、好きな時間だけいられるシステムのようです。
この日はめちゃめちゃ暑くて、私は最近はあせもにやられているので着物は封印していたのですが、さすがにここにいらっしゃる方は、夏の着物や浴衣姿の方が多く、えらいですね。
和裁士さんへの相談ごともさまざまで、絶対に着物が濡れない雨コートを依頼される方、娘さんの七三五の衣装を依頼される方など、いろいろ個別の相談に乗ってくれるようでした。
こちらは音楽好きの男性が持ち込んだ羽織です。
大きさの見本のために持参されたのですが、なんと裏にはベートーベンが!
それも絞りでした。
表はピアノの鍵盤が踊っていました。
すごいこだわりですね。
こんな美しい羽織は見たことがありません。
それほど着物にこだわっていらっしゃる方が、信頼して仕立てを依頼されるのだろうと思いました。
ちなみに、写真の中の浴衣姿の方からは、手拭いを使った半襦袢の作り方を教えていただきました。
初対面でありながら、こういう情報交換ができるのは、いいですね。
この日の目玉は「小林染工房」さんというところの色見本の端切れでした。
色とりどりの端切れが所狭しと置かれていました。
私はこちらの緑と紫の一越縮緬の生地を購入しました。
写真よりもずっと美しい色です。
帯揚げにしようと思っています。
こちらは、「無料ですので、ご自由にお取りください」と書かれた箱の中から掘り出したもの。
絞りの可愛い布を見つけて、お土産にいただいてきました。
これは2枚つなぎ合わせて、帯揚げを作りました。
この日は、ちょっと用事があったので、あまり長時間滞在できませんでしたが、談話室には入れ代わり立ち代わり、着物好きの方が自由に参加されていらっしゃいました。
平山さんは「喋って仕立てる和裁士」さんというようなキャッチフレーズがついていらっしゃるようですが、多くの人が集まる暖かい雰囲気を醸し出すことができるのも、平山さんのお人柄とその実力の結果でしょうね。
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和裁といえば、私はものすごく不器用な人間なので、いい加減な衿付けや丈詰めくらいしかできませんが、私の母は和裁が得意でした。
母は家政科の専門学校(今は大学になっています)に通っていたため、もともと洋裁が得意で、それこそ私は下着からウェディングドレスまで着るもののほとんどは母に縫ってもらったくらいです。
でも、子供の頃は手作りの服を着ていましたが、ティーンエイジャーになると既製服の方がかっこよくなり、母も子供たちの洋服を作る必要が少なくなったのか、だんだんと和裁をするようになりました。
国家資格を取るほど仕立てが上手だったわけではありませんが、それでも親戚の着物のお直しをしたり、近所の人に頼まれて着物の仕立てをしていました。
私が学生の時は、母が縫物をしているそばで、ぺちゃぺちゃとおしゃべりをしていたような記憶があります。
でも当時の私は着物にはまるで興味がなかったので、母が何をしているのかはほとんど分かっていませんでした。
そして母が老人になり、グループ・ホームに入れた時点で、それまで母のところにあった仕立て台や、色とりどりの美しい絹糸や小さな道具などは、すべて片付けてしまいました。手芸好きの友人に差し上げたり、NPOのリサイクルショップに無料で引き取ってもらったりしていました。
今思えば、あの時、こてなどは保存しておけば良かったと悔やむことしきりです。
そして今、母はまるで記憶がないので、自分で和裁をしていたことも忘れているのだろうと思います。
母のホームに行くときは、よく着物を着て行きます。
半分は罪滅ぼしのようなものです。
母は、私が着物を着ていると、和裁をしていたことを多少は覚えているのか、嬉しいような表情をします。
母の頭がまだクリアーだったときに、もう少し着物のことを尋ねておけばよかったと思うばかりです。
そして料理も掃除も手芸も、布団のうち直しや洗い張り、電気製品の修理まで、家庭内のことすべてに上手だった母に対して、父譲りの不器用人間である私は、何も勝るものがないのだ、とつくづく思うのです。