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2022年1月22日土曜日

市民カレッジ「源氏物語と能2」

先週に引き続き、能楽師・安田登さんの講座2回目に参加してきました。

安田さんは、とても守備範囲の広い方で、能の話はもちろんのこと、言葉の語源について、雅楽について、現代文化について、なんでもよくご存じの方で、お話もユニークで面白い方です。 著書は47冊も書かれているそうで、すごいですね。

今回は黒紋付に袴という能楽師スタイルの下に、襟のないYシャツをお召しでした。このように重ね着をすると、ちょっと昔の書生さんのような雰囲気になりますが、着物の襟が汚れないので助かるということでした。いろいろな決まりを打破するのもお好きな方のようにお見受けしました。

今回の源氏物語は、光源氏と夕顔が親しくなり、五条あたりの町中の家で過ごす場面でした。

その最初の場面で、夕顔の和歌

「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」

と、これに対する光源氏の和歌

「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔」

この2首を「越天楽今様」に合わせて、参加者みんなで歌ってみたのでした。

今回も笙の笛の伴奏付きでした。

今様と言うとあまりピンと来ませんでしたが、なんとも優雅な音楽でした。これに合わせて舞も舞うのでしょうか。

ちなみに今様は、和歌の57577のうち、757575の部分を謡うようでした。

この場面の後、源氏は夕顔のおっとりとした物腰や性格に惚れ込み、彼女と二人きりでしっとりとした時間を過ごそうとして「なにがしの院」に向います。

そこで、もののけに襲われるのですが、今回のお話はここまででした。

私は、夕顔はあまり主体性がなくて、なよなよしていて、男の言いなりのように思えて、あまり好きな人物ではありませんでした。でも読み返してみると、彼女のぼーっとして、はかなげなところが、源氏のようにいつも地位のある女性に囲まれている男性にとっては、かえって魅力的なのかもしれないと思うようになりました。

特に高貴でもなく、地位もない、そんな女性に惚れ込んでしまう光源氏、そしてそんな女性を物語の初めの方に登場させた紫式部は、ただものではありませんね。

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この日もKさんとご一緒でした。お母様が着ていらっしゃったという焦げ茶の生紬の着物は、とても暖かいそうです。ピンク色の帯もとても可憐で、私もこういう帯がほしいと思いました。

私は黒地に白い水玉模様の紬。ちょっと雪がイメージされますね。

着物の八掛が臙脂色だったので、帯も臙脂色と黒の模様のものにしました。

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「一日一句」

平安の 寒さを偲ぶ 冬深し



2022年1月17日月曜日

市民カレッジ「源氏物語と能 1」

しばらく参加していなかった「ちょうふ市民カレッジ」ですが、おあつらえ向きの講座が始まりました。

「源氏物語と能」です。3回シリーズで行われます。

講師は下掛宝生流ワキ方能楽師の安田登さん。

源氏物語は平安時代に紫式部によって書かれたお話ですが、能が生まれたのは南北朝時代です。

私達は千年前に生まれた源氏物語を現代文でも読むことができますが、平安時代からおよそ300年下った室町時代の人は源氏物語をどのように読んでいたのでしょうね。

能の中で、源氏物語を扱ったものは、12あるそうですが、今回は夕顔と六条御息所が登場する能について教えていただける予定です。

講師の安田さんは、昔は高校の先生(たぶん古文の先生)をされたということで、授業の進め方もユニークで面白かったです。

言葉の成り立ちについても詳しくて、なるほどと思うこともありました。

その一つが「あはれ」という言葉でした。よく「もののあはれ」などと言いますが、この場合の「あはれ」とは、「あー」と思わず言葉に出してしまうような事柄や状況を指す、ということでした。なるほど、わかりやすいですね。

私達はグループで「源氏物語を楽しむ会」という読書会をしていますが、素人だけでやっているよりも、やはり指導者がいらっしゃると、深みが増しますね。

いろいろと参考になる市民カレッジです。

何よりも面白かったのは、笙の笛の演奏家のカニササレアヤコさんが登場されたことです。

彼女はかなり有名なお笑い芸人だそうです。ユーチューブにもたくさん登場していました。この日は平安時代の装束と烏帽子をかぶって登場しました

笙の笛の「ふにぁ〜」という音楽が、能とよくマッチしていました。

この市民カレッジは市民でなくても参加できるので、「源氏物語を楽しむ会」でご一緒しているKさんも受講されています。

この日はとても素敵な塩瀬の帯を締めていました。

落ち着いた茶色の市松模様に、色々な模様が描かれています。かなりお高い帯だったそうですが、それだけのことはありますね。

私はネットで見つけた紬と、骨董市で千円で買った刺繍の帯という格安スタイルでした。

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「一日一句」

謡初め 御簾の向こうに 笙の笛



2020年11月25日水曜日

新作能 深大寺 蕎麦の能「月魄」

今年の10月に深大寺水生植物園に行きました▼。そこで美しい蕎麦の花を見ました。


白くて、清楚でとてもきれいな花でした。
この実で蕎麦が作られるのですね。


その蕎麦の花がテーマになった新作能を、市のホールで見ました。


新作能 深大寺 蕎麦の能「月魄」です。


実は調布市では、このところ3年間、連続して、能の公演をしています。
2018年は「序」
2019年は「破」
そして今年は「急」という能の序破急のシリーズです。

会場が近いので、私は毎年、参加していました。

また公演とは別に、市民カレッジでも能の講義が多数あり、これも毎年、受講していました。
増田正造先生の講義、金春流のシテ方の講義、女性シテ方による仕舞、狂言のレクチャーなども受講しました。
また能面の展示、白百合女子大での能体験などもあり、調布市は能の環境としては、非常に恵まれたところなのです。




今回の新作能は、信仰をベースとして、地元の名刹・深大寺、地元の名物・蕎麦がメインの能でしたが、とても幻想的な世界でした。

特に蕎麦の精が美しく、淡いクリーム色の衣装や冠がとても素敵でうっとりとしました。空にかかるお月様もきれいでした。

また謡の中では多摩川も歌われていて、地元民としては嬉しかったですね。


その他に「石橋」もありました。半能というのだそうです。これは歌舞伎の連獅子の元になったものだと思いますが、紅白の牡丹の鮮やかな色彩と、豪快な舞は迫力がありました。

今回の公演は、インターネットでも視聴できるようになっていました。


今回で、能<odyssey>の3年間は終了します。
私は能のことは何も知らないところからスタートしましたが、おかげで各地の能の舞台を鑑賞したり、音読会に参加したりするようになりました。
能楽師の山中迓晶さんはじめ、関係者のみなさま、市の文化財団のみなさま、お疲れ様でした。

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この日の装い。

ちょっとオシャレに、付け下げ小紋にしました。
菊のような花柄ですが、裾から上に行くにしたがって、花柄が小さくなっています。
「今昔きもの大市」で見つけた▼もの。サイズがぴったりでした。


帯はお気に入りの白のレース帯。


お出かけには、いつもの黒の長羽織。


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「一日一句」

紅白の牡丹美し獅子の舞


2020年5月24日日曜日

コロナ禍中のお稽古事

明日にでもコロナの緊急事態が解除されそうです。
コロナの感染防止としては、「人と人との接触を少なくすること」「人と距離をおくこと」「正面から話をしないこと」などと言われているので、お稽古ごとのやり方も変わってきました。

会場が利用できなくなったので、私の3月中旬からのスケジュールは、真っ白になりました。
私が関わっているお稽古事などがどのようになったか、ちょっと書いてみました。

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三味線のお稽古は、3月10日が最後でした。
それ以降は、会場である市の施設会場が全面、使用できなくなりました。
3月からは「秋の色種」という曲をする予定でしたが、最初に1回習っただけで、すぐに中断してしまいました。
また先生も演奏会などがすべてキャンセルされ、先生ご自身も残念だったと思いますが、私もそれを見に行く楽しみもなくなってしまいました。


「秋の色種」という曲は、江戸時代後期に作曲されたもので、しんみりと色っぽい曲です。
先生が弾くお手本は録音させていただいていたので、休みの間も自習していましたが、やはり限度がありますね。
先生からはリモートお稽古の提案もあり、お弟子さん仲間ではその方法をしている方もいらっしゃるようですが、やはり音源がずれてしまうので、私はリモート稽古はしませんでした。
秋に先生のお弟子さん揃っての浴衣会があるので、その時にみんなで演奏する曲の楽譜と音源を、先生からインターネットで送っていただきました。
現代風の楽しい曲なので、今は、それを一人でお稽古しています。

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謡音読会は2月の会が最後でした。
今年から会場が国立能楽堂の広い会議室に変わったので、あまり蜜にはならないのですが、とにかく大きな声を出すので、やはりこの会も中止になりました。


その後、先生からは5月に予定されていた「氷室」の謡をユーチューブにアップしていただいたので、それを聞いています。
能「氷室」のユーチューブはこちら▼です。
あらすじ・解説・現代語訳・仕舞が楽しめるようになっています。

6月にはまた能楽堂でお稽古ができるようになるといいと思っています。

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フォークダンスのお稽古は、2月29日が最後でした。
これは手を繋いだり、ペアになったりしてダンスをするため、濃厚接触になるので、すぐに中止が決まりました。


メンバーに高齢者が多く、また電子機器を使えるような先輩はいないようなので、完全に中断されてしまいました。
連絡も電話連絡、という昔ながらの方法です。
本来なら5月には味の素スタジアムでのスポーツ大会があり、6月には市のお祭りがあり、そこで私たちもフォークダンスを披露する予定になっていたのですが、すべてキャンセルとなりました。


そして次回のお稽古は、なんと10月になるとのこと。
せっかくいろいろな曲の振付を覚えたのに、すべて忘れてしまい残念ですね。

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自主的に開催している「源氏物語を楽しむ会」ですが、こちらは3月中旬の会は、普通通り行えましたが、4月からは世田谷区の施設が利用できなくなりました。
それでなんとかメンバーの顔合わせだけでもしたいと思い、「メッセンジャー」のグループでのビデオ電話を使って、集まることにしました。
4月のオンライン▼は顔を見ながら話せることを確認して、5月のオンライン▼は実際に原文を読んだり、現代文を読むことができました。

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ユーチューブなどを見ていると、いろいろな人たちがいろいろなやりかたで、お稽古を続けていらっしゃいます。
みんなで演奏をするのは、かなり難しいと思うのですが、やはりこれからはリモートでもお稽古をするような時代になるかもしれませんね。
そのためには、音声のズレなどがもう少し解消できるようになると良いですね。

おかしかったのは、こちら▼の邦楽演奏家のユーチューブです。
みなさん、仕事がなくなってしまったので、ウーバーで働いたり、お蕎麦屋さんで働いたりしていますが、それでも黒紋付きを着れば、かっこいい演奏家です。
来年の「鞍馬会」は、是非、リアルで見てみたいと思いました。

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「一日一句」

(今日は短歌風になりました)

お稽古はコロナ乗り越え工夫して
六月になればまた会える





2020年2月6日木曜日

市民カレッジ「金春流能楽講座」最終回

2019年11月からスタートした市民カレッジ「金春流能楽講座」▼でしたが、先日は、最終回となりました。


前回は、みんなで国立能楽堂に金春会定期能の鑑賞▼に行きましたが、今回はいつものように、講師の山井綱雄先生が能楽について熱く語って下さいました。

まずはカナダのモントリオールでの海外公演の時の体験談をされました。
あちらでは会場の空気が日本とはまるで違い、時差ボケも吹っ飛ぶほどの大歓迎を受けたそうです。
最後にはスタンディングオベーションもあり、とても感激された様子でした。
日本では、なかなか拍手もままならない感じですけどね。

また学生時代には、歌舞伎役者の市川染五郎さん(当時)が一学年上の先輩だったそうですが、ちょっとした裏話もされました。

今回は「正尊」という能についての解説がありました。


これは平家物語から由来した能ですが、頼朝方の土佐坊正尊という人が、義経を打ち取りにやってくるお話です。
最後の場面では、弁慶がなぎなたを振り回しての立ち回りもあります。
ビデオ鑑賞もありましたが、弁慶、義経、静御前(子方)がそれぞれ登場して、チャンバラをするのでした。
迫力のあるスカッとするものでした。
起請文を読む場面では、何も書かれていない巻物をすべてを暗記しなくてはならないので、役者さんは緊張するそうです。

なおこの能楽は、流派によって、シテ役が異なるそうです。
観世、宝生、喜多流では正尊がシテとなりますが、金春・金剛流では弁慶がシテとなるということでした。

最終回なので、記念に写真を撮らせていただきました。


左は芸ごとに詳しいS子さんです。
日舞の友だちのSさんに写してもらいました。

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この日の装い。

なんとなく派手な着物を着てみたい気分になって、夕焼け色の紬にしました。


これは先月、世田谷ボロ市の時▼、会場近くにあるリサイクル屋さんで見つけたもの。
この着物と、帯を買って、2枚で3500円でした。

帯は、使用頻度が高い黒にシルバーの幾何学模様帯。


いつも気になるのですが、どうしても背中にシワがよって困ります。
私の背中の幅が狭いのかな。


2020年1月28日火曜日

金春会定期能

先日は、国立能楽堂で金春会の定期能を鑑賞してきました。
これは市民カレッジの能楽講座▼の一環で、能の座学の他に、実際の能を見るという日程も入っているからです。
ということで、市民カレッジ主催団体が年間鑑賞回数券チケットをまとめて購入して、それを各受講生に割り当てたのでした。


ちょっと早めに着いたので、能楽堂のお庭で写真撮影。


この日は、能が3本、狂言が1本という内容で、お昼過ぎから夕方5時過ぎまでずっと鑑賞しました。


最初は「御裳濯(みもすそ)」という能で、金春流でしか上演しないものだそうです。
かなりツウな人でも、見たことがないという珍しい能でした。
伊勢神宮が舞台のおめでたい内容でしたが、なんといってもお囃子の演奏が素晴らしかったです。
85分という長丁場、小鼓と大鼓はずっと打ちっぱなし。
「イヤーハッハッ」という掛け声も素晴らしく思いました。
市民カレッジの講師、山井綱雄さんは地謡を担当されていました。

次は狂言の「鞍馬参り」。
とぼけた味の笑いでした。

次は能「羽衣」。
これは有名なお話なので、眠くならずにすみました。
天女の舞が美しかったですね。
山井さんは後見でした。

その後にようやく休憩時間。
ずっと座りっぱなしでしたので、いささか疲れました。
展示室で、能装束や能面を拝見しました。
同じ市民カレッジを受講している友人とも出会い、おしゃべりがはずみました。


最後は能の「藤戸」。
これは「平家物語」を元にしたお話でした。
佐々木三郎盛綱が藤戸(備前の国の児島という海峡)の先陣の功のとき、浅瀬を尋ねた二十歳の若者を口封じに殺してしまい、老いた母が恨みを嘆くというお話です。
殺した者、殺された者、残された者の悲しみが伝わってくる物語でした。
シテの母親(後シテでは若者の亡霊)が、面をつけているためか、声がこもってしまってよく聞き取れずに残念でした。
ワキの盛綱役は、お顔も声も衣装(鶴の絵柄)も立派で、良かったと思いました。
ただ、ワキツレの二人は、何もせずに片膝立ちでずっと座っているだけで、なんだか気の毒になりました。

今回は、市民カレッジでご一緒のFさんと鑑賞しましたが、彼女は能は初体験でしたが、とても感動していました。
能楽堂の神秘的な美しさにも触れることができて、とても良かったとの感想でした。
Fさんは、以前、日本舞踊でご一緒した方ですが、淡い色の着物姿がお似合いでした。
今回は全席自由席で、ちょっと早めに行ったので、最前列で鑑賞できたのも良かったと思いました。

能が終わって外に出ると、もう暗くなっていました。
KDDIのビルが美しく輝いていました。


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この日の装い。

前日のきもの交換会で引き取り手がなかった紬の着物▼にしました。
サーモンピンク、焦げ茶、緑のストライプです。


帯は叔母の遺品の緑の帯。


帯締めも叔母のもの。
ちょっと鏡板の松のような感じでしょ。


2020年1月24日金曜日

「AIと文化を考える公開シンポジウム」@コレド日本橋

先日、コレド日本橋(日本橋一丁目三井ビルディング)に行ってきました。


といっても、ショッピングではありません。
このビルには、オフィスエリアもあるのです。


地上15階には、理化学研究所が入っています。
そこの「革新知能統合研究センター」というなんとも難しそうな名前のエリアで、公開シンポジウムがあったのです。


私は少し前まで、情報科学と脳神経科学の境界領域の研究者たちが集まる学術団体で仕事をしていました。
(といっても研究者ではありません。)
ある大学院の人間情報学講座というところにいたのですが、そこには人間の身体性を研究している先生たちや学生たちが所属していて、お手玉を追う目の動きを研究したり、ボールを投げる腕の研究をしたり、足音の研究などをしていました。
私もよく分からないながらも、門前の小僧のように、コンピュータ用語や、人工知能とか身体性などという単語を聞きかじっていました。

今回のシンポジウムは、時代の先端であるAIと、身体性を考えるという内容の公開講座で、おまけに参加費無料でしたので、ちょっと昔のことを思い出して、どんなものか参加してみました。

シンポジウムには、「能における身体性」というプログラムもあるというで興味がありました。
以前、読んだことのある「650年続いた仕掛けとは 能」という本の著者でもある安田登さんのお話を聞いてみたいと思ったのも、参加の理由でした。


初めに、理研の佐倉統先生の挨拶がありました。
「技術によって社会はどのように変化するか」ということが、テーマのシンポジウムであるという説明がありました。
また社会には文化という側面もあり、とくに日本の文化(能)からAIを考えてみたいということでした。

最初の講義は、東大先端科学技術研究センターの稲見昌彦先生。
「ディジタルサイボーグ」というお話でした。
今年は1920年に≪ロボット≫が登場してから「ロボット100年」に当たる年でもあり、
また≪サイボーグ≫という用語が初めて登場したのが1960年なので、「サイボーグ60年」という記念すべき年なのだそうです。
では、ロボットとサイボーグはどのように違うのでしょうか。
稲見先生によると、ロボットは、「人間代替」であり、人間がやりたくないこと、危険なこと、キツイ仕事などを担う存在だそうです。
それとは反対に、サイボーグは「人間拡張」であり、人間の分身、変身、合体などができるということでした。
サイボーグには、たとえば人間以上の器用さ、力持ちなどが期待されます。
そしていろいろな映像を使って説明されました。

一番面白いと思ったのは、「阿修羅システム」という超身体の装置でした。
これは阿修羅のように、人間に機械的な手が何本も生えるというものです。
その機械的な手を遠隔操作して、一人の人間にいろいろなことをさせていたのでした。
これは人形浄瑠璃で、人形が人形遣いにあやつられるような感じでした。


こういうことができるようになると、身体に障害のある人、怪我で手足を失った人もいろいろなことに取り組むことが可能になる、というお話でした。
特に今年はパラリンピックがあるので、サイボーグ機能の発達により、スポーツの不得意な人や、お年寄りもスポーツを楽しめるようになるのではないか、ということでした。
技術革新によって、いろいろな不自由が克服されるのはすごいものだと思いました。

次に登場したのは、下掛宝生流ワキ方の安田登先生です。
会場には50から60人くらいの参加者がいましたが、そのうちの3分の1くらいは能を見たことがある、というのでちょっと意外でした。
科学の研究者にも、能のファンは多いようですね。


まず能は、神事であり、憑依芸能であるというお話がありました。
能を演じるのは、「からだ」ではなく「み(身)」であり、「こころ」ではなく「おもひ」を演じる、ということなのだそうです。
また世阿弥の言葉をいくつか引用してお話されました。
まず能には「目前心後」という言葉があり、これは「目を前に見て、心を後ろに置け」ということだそうです。
また「離見の見」という言葉もあり、自分の見る目が観客の見る目と一致することが重要であるということだそうです。
また能はワキとシテにより、初めはかみ合わなかった会話がだんだん話が成り立っていくということや、「無主風」「有主風」という芸風についても説明がありました。

このあたりのお話は、ちょっと雲をつかむようなところもありましたが、「能を習うときは、10年間は質問するな」という言葉にハッとしました。
つまり最初の10年間は師匠のすることをしっかりと真似をして覚えて、質問するなら10年間待て、ということは印象的でした。

なにやら意味深いお話が続きましたが、講演の途中にはの夏目漱石の「夢十夜」の舞を披露されました。
なんと英訳の字幕付きでした。
日本語よりも英語の方が分かりやすい言葉で書かれていました。
朗々とした声で、力強い舞をされました。

最後に、稲見先生と安田先生が、サイボーグの話と能の話はとても似通っているところがある、と意見が一致されていましたが、私にはどうもその辺りは理解ができませんでした。

この後も、京大の明和政子先生の講演や、パネルディスカッションもありましたが、時間も遅くなったので、途中で失礼しました。

夕暮れの東京、15階からの眺めです。


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この日の装い。

こういうシンポジウムの時は、何を着たらよいか迷いましたが、どうせ着物は目立つので、あまり考えずに好きなものにしました。

インターネットで購入した濃い藍色のお召です。
赤い花模様が、キラキラしてきれいです。


帯は、着物のおまけで付いてきました。


龍の模様の帯です。
自分では絶対に選ばない模様ですが、龍は魔よけにもなり、縁起が良いのだそうです。


2020年1月23日木曜日

「能と吉祥 寿」展@大倉集古館

先日、大倉集古館▼に行ってきました。


ここは、明治から大正にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎が設立した美術館ですが、日本では最初の私立美術館だそうです。

喜八郎さんという方は、数多くの業績を残した人ですが、美術品の海外流失を嘆いて、大正6年(1917年)に集古館を設立。長年にわたって集めた多数の文化財を寄付したそうです。
堂々とした風格のある方でしたね。


その後、大正12年(1923年)の関東大震災によって、建物と多くの所蔵品を失ってしまいましたが、昭和3年(1928年)に、中国様式の建物を建築しました。


そして長男の喜七郎さん(親が八郎で、息子が七郎)が父の遺志を継いで、美術館の経営を支援して、また自らが蒐集した名品を多数寄付したそうです。
すごい財閥の親子ですね。
喜七郎さんは、ホテルオークラなどのホテル業でも活躍されました。


現在、こちらの美術館では、国宝や重要文化財を含めて、約2,500もの美術品を所蔵しているそうです。

昔のお金持ちは、美術に対して、愛と理解があったのですね。

今回の展示は「能と吉祥 寿」という内容でした。
新年に相応しい、松竹梅や宝尽くしといった吉祥文様の作品が並んでいました。
美しい能装束、能面の他に、大皿や香箱、そして国宝の「普賢菩薩騎象像」も展示されていました。


能装束は、襟の付け根のところが少しほころびていましたが、手の込んだ、鮮やかな刺繍の色などはそのままでした。
ほとんどが江戸時代のものでしたが、よく保存されているものだと思いました。

ただ、できればその装束が、どの能を演じるときに着用したのかが、説明されていると良いと思いました。


私が一番気に入ったのは、3幅の「石橋・牡丹図」でした。
鈴木守一筆ということでしたが、この方は鈴木其一の息子だそうで、さすがに画風は其一そっくりの端正なものでした。


(本物はもっときれいです)

今回は、和の世界に詳しく、能も習っていたY子さんもご一緒でしたので、参考になるお話を伺えました。
特に香道については、私には何に使うのかまるで分からない道具のことも説明していただきました。
和の世界には、いろいろな美しいお道具が揃っているものなのですね。

こちらの展示会は、2020年1月26日まで開催されています。
入館料はワンコインです。

集古館の後は、リニューアルされたホテルオークラをちょいと覗いてみました。
2019年9月にリニューアルオープンされました。


ゴージャスだけれども、和風テイストのすっきりとしたロビーでした。

このホテルでランチというのは、ちょいと高そうなので、六本木一丁目まで歩いて、リーズナブルなカフェに移動しました。


大きめにカットされた野菜がたっぷり入ったカレーでした。


Y子さんと、和のお稽古事談議などをして、ゆっくりとカレーをいただきました。