ちょっと前に読んだ小説のご紹介です。
植松三十里さんの「唐人さんがやって来る」。
このタイトルの「唐人」さんというのは、朝鮮の通信使のことをさします。
宝暦14年(1764年)、ちょうど前の東京オリンピック(1964年)があった200年前のお話です。
当時は、徳川の将軍様が代替わりをするときには、朝鮮通信使の方が来日して、それをおもてなしするという風習があったそうです。
その来日は12回もあったのだとか。
そして彼らが来日した時には全国で接待をして、またその行列絵を出版するというイベントもあったそうです。
現代でも、外国の皇室の方や首相や大統領が来日される折には、いろいろな催しをしたり、その様子を新聞や週刊誌などのカメラマンが記録にとり、それを特別な冊子にしたり、パンフレットにしたりしていますね。
このお話はその江戸版とも言うべき内容です。
物語では、日本橋の書店に生まれた3人の兄弟が、この通信使に関わりました。
跡取り息子の長男は、先代が果たせなかった行列絵を出版することに奮闘し、またお武家さんのおうちに養子に行った次男は接待に奔走、放蕩息子だった三男も彼なりに長兄を助けようとおバカな真似までして頑張りました。
それぞれの3人の息子たちの特徴がよく表れていて、家族の物語としても楽しめます。
最終的には行列絵は出版されるのですが、それまでの紆余曲折やいろいろな物語を面白おかしく描いています。
ただし、作者の植松さんは、実在の人の伝記小説は、いつもとてもよくまとめてあり、涙を誘う物語に仕立てることもお上手な方だと思うのですが、今回のように架空の人物を小説の中で動かすことはあまりなかったのではないかしら。
ちょっと無理をされているようにも感じました。
たとえば、町人だからとって蓮っ葉な言葉使いをしたり、男女の絡みも、いつもの小説とは、ちょっと調子が違うのではと思える個所もありました。
しかしながら、読み応えのある時代小説となっていることは本当ですし、当時の人の生活も垣間見ることができます。
たとえばそれまで牛やブタなどの食肉習慣はなかった時代、なんとか工夫して朝鮮の人に料理を提供するシーンは面白く読みました。
また三男は今でいうコスプレに夢中になり、そこで自分自身を取り戻すというお話もなかなかうまく描けていると思いました。
ちなみに、植松さんは私とほぼ同じ時代に、同じ大学で学んでいた作家さんですが、いろいろな時代の小説をたくさん書いていらっしゃり、頭のできがどうしてこんなに違うのだろう、と思わざるを得ません。
「唐人さんがやって来る」
植松三十里(うえまつ みどり)著
中央公論新社
価格: 1800円
発売:2013年7月
2 件のコメント:
新年早々とても深いトリビアをありがとう。
あっ、大変遅ればせではありますが・・おめどうございます。先日マサさんのブログから飛ぼうとしたのですが表示できなくて・・暫くお邪魔してなかったので拒否られてしまった?と心配しました(笑)
私のPCがポンコツなだけだったようです。
機嫌が良いときと悪いときがあってとても私を困らせます、ホントに。
今年も年明けから、健康で順調そうですね。
その元気の爪の垢をもらいたい1年です。
どうぞ、広い心でよろしくお願いします。
頭の出来は・・としちゃん充分じゃないですか?どこのきわみを目指してますか?(笑)
ひょっこりさん、新年おめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
マサさんのところのコメントを見ていて驚きましたが、お身体、大丈夫ですか?
私は身体が丈夫なことだけが取り柄ですが、それでも最近は力がなくなったと感じます。
坂道を自転車で登るとき、なかなか進んでくれないのですよ。ちょいと悲しいですね。
これからもコメント待っていますね。
くれぐれもお大事に!
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