2021年3月26日金曜日

「炎帝 花山」

花山天皇の生涯を描いた小説を読みました。

萩 耿介さんの「松林図屏風」を読んで▼、この著者の他の本も読んでみたいと思ったからです。

花山天皇は、968年~1008年、第65代としての天皇在位は984年~986年の2年間です。

出家してからの人生の方が長いので、花山院と書くことにします。

彼は冷泉天皇の第一子であり、母は藤原伊尹の娘・懐子でした。

外祖父の藤原伊尹の力によって天皇になりましたが、この頃は藤原兼家、義懐、頼忠などの藤原グループが主導権を握っていて、天皇の力はそれほどなかったのでした。

また花山院は冷泉天皇の息子ですが、女狂いで狂気という点では、父の血を継いでいたようです。

師貞(もろさだ)と呼ばれていた幼い頃から自由奔放に生きていたようですが、その後の人生も一般人からは想像もできないほど、壮絶な人生でした。

花山院となって、19歳で出家しますが、その後の修業の内容がすごい。焼身自殺のような体験をしたり、熊野詣をして、荒行を続けました。

仏教に対して、なんというか正常ではない思いがあったようです。小説の後ろの方に参考文献としてオーム真理教の本がありましたが、つまり普通の宗教ではない、異常な宗教感覚の持ち主だったようです。

そんな異常事態が続く中で、不思議な場面がありました。

それは花山院がある女性と出会う場面がありました。その彼女が「藤原為時の娘」だというのです。ということは、その女性は紫式部ですね。彼女が何かを書いていたという説明がありました。その時はそれだけで終わってしまうのですが、この小説の一番最後、花山院が亡くなる場面には、源氏物語の一場面(光源氏が亡くなるところ)の写し(当時は出版技術はなく、すべて手描きで写していた)が出現してくるのです。

花山院の行動も心情も同意できませんが、この彼の人生に源氏物語をうまく絡ませた手法は、面白いなと思いました。

この二人は同時代の人だったというのが分かるのも、面白い観点です。

この小説は、主人公が異常な人だったので、ストーリーも異常になりますが、それ以上に著者も書いているうちに、だんだんと自分自身が高揚して、訳が分からなくなったのではと感じました。

かなり分厚い本で、厚みは3センチくらいありました。それほどの長編を書くというのは、非常にパワーがいることだと思います。

ただし、これが優秀作品であるかは、私には判断できません。

あまりに激しい花山院に付き合って、疲れました。息苦しくなるような小説でした。

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「一日一句」

春の雷(らい) 狂気の帝 山ごもり



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