2008年6月29日日曜日
信濃なる・・・
「信濃なる千曲の川の細石(さざれし)も
君し踏みてば玉と拾わん」 読み人知らず
とてもきれいな歌だと思わない?
千曲川の河原にあるちいさな石も、好きなあなたが歩んだあとにあった石なら
宝物のように大切に拾って、袂におさめましょう
そんな優しい乙女心を歌ったものだと思うの。
もちろん出典は万葉集よ。
ところで、この万葉集の歌をどこで見つけたと思う?
なんと、「情報技術の人間学 ~情報倫理へのプロローグ~」という、お堅い本で見つけたの。
この本は笠原正雄先生という大阪大学教授が書いている本で、電子情報通信学会というところから出版されています。
発行元である電子情報通信学会は会員数3万人規模の大きな学会で、私もお仕事上、お付き合いのある学会なんだけど、電気や電子関係の人なら知らない人はいないくらいなの。
笠原先生は、暗号学とか情報セキュリティとか、めちゃめちゃ難しい研究をされている工学博士で、多くの学会の名誉会員であり、他にもいろいろ肩書きがある方のようですけれど、電気や電子のことばかりでなく、万葉集を引用したり、エジプトやギリシャの歴史を語るくらい、多方面に造詣が深い方です。
それって、素晴らしいと思うわ。
さて、どうしてこの本を読んだかというと、ある日の新聞広告で見つけたの。
そのうたい文句が良くて、はっきり覚えていないけれど、《IT社会に生きる全ての人にささげる本》とか、書いてあったの。
それでね、市の図書館にこの本をリクエストしたわけ。
そうしたら、私の住んでいる市立図書館には在庫がなかったので、わざわざ小平市立図書館から取り寄せていただいた、といういわくつきの本なのです。
この本は冒頭に書いたように万葉集からの引用も多いの。
というのは、万葉の歌人 大伴家持は人一倍コミュニケーションについてのこだわりをもっていた人らしいのです。そしてこの本の著者も21世紀の世界には人と人とのコミュニケーションが必要だと述べているの。
この先生は赤ちゃんの環境というのにも興味を持っていらして、たとえば生まれたばかりの赤ちゃんに、大型スクリーンで映し出されるきれいな花や虫を見せると、どうなるか、ということも警鐘を鳴らしているの。
つまりね、私たち大人は、これまでの人生で、花の大きさはこれくらい、虫の大きさはこれくらいということを実物を通して分かっていて、それでスクリーンを見ているでしょ。
ところが赤ちゃんが、その本物の大きさも分からないうちに大型スクリーンの花を見るとしたらどうなるか、それはこれまでの人類が経験しなかった問題に出くわす、というのよ。
それに大型スクリーンの大音響も赤ちゃんには問題だそうですよ。
うーん、なるほどね。
話が横道に入ってしまったけれど、この本の最初には電気通信関連の発達の歴史が書かれているの。
19世紀にベルという人が電話を発明して、それからマルコーニという人が無線通信に成功。
その後の爆発的発展は、ちょうど私たちが生きてきた歴史と重なるわね。
そういう電子情報通信技術というのは、いつでも(時間)、どこでも(空間)、だれとでも(人間)コミュニケーションを可能にするという目標があったというの。
今ではその目標はかなり達成されているわよね。
小さな携帯電話がひとつあれば、目の間の美しい花を写真に取り、それを誰かに送って見せることもできるんですもの。
また好きな時間に好きな歌手の歌を聞くこともできるし、世界中の人とゲームで対戦もできるでしょ。
そんなこと、私たちが子どもだった頃には想像もしていなかったことよね。
ところがそういう技術が発達すればするほど、コンピュータ犯罪、プライバシーの侵害、著作権問題などというそれまでには考えられなかった出来事が発生しているのよね。
つまり、それが電子情報通信技術の「光と影」だというの。
こういう急激な変化に対して、研究者・技術者こそが、きちんと対処すべきだというのです。
つまりこの本はそういった専門家への倫理を説いた本ですね。
でも、具体的な例が書いてあったので、電気通信には素人の私でも読むことができたわ。
ただし、あまりにも装丁がダサいので、これは考えものでしょう。
いかにも教科書みたいで、普通の人は手に取らないかもしれないな。
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4 件のコメント:
私の友人が、生まれてすぐのことを、覚えているといいます、隣の部屋で夕食時だったのか大人の話し声が聞こえて、そして彼女は、真っ暗な中で、今私がすることは、親指を中にしてグーを握ることと思っていたそうです。私はこの団欒の声が聞こえていたというのがすごく大事ことだと思うの。私より少し下で、5人兄弟の4番目。
科学は今まで、光の部分ばかり追い続けてきたけれど、これからは、影の部分を考えていくことが大事な部分になっていくのでしょうね。
生まれていたときのことを覚えているというのも、すごいな。でも大家族の中でみんなから見守られている状況で新しい命が生まれた、という感じが伝わってくるわ。5人兄弟というのも今では珍しいでしょうね。
そういえば、トントン、ヨーロッパではすごくきれいだったね。(日本でもきれいだけど)ゆったりとしていて、大富豪のマダムのように見えたわよ。知らない土地にいても、そこに馴染んでいる様子が伝わってきました。いい旅だったようね。
としちゃんが読む本のジャンルは幅広いですね。でもこういう問題はこれから考えないとますます複雑でしかも子供達が安易に犯罪に巻き込まれやすい環境ですものね。
私達の子供の頃と比べると情報量の多さでもすごいもんね。その中からどう選ぶのか?
光と影ですか。(この言葉を聞くと瞬間的に写真に結びつく)笑
そうそうトントンさん綺麗ねぇ。私も同感!
大富豪のマダム、いいね!
さとさん、この本はたまたま目に付いたので、図書館にリクエストしたのだけど、読んでみたら、本当に大切なことがたくさん書いてあったので、皆さんにもご紹介したのです。
とくに小さな子どものいる人(お孫さんとかね)には重要なことが書いてありました。子どもが好きだからといって、TVを子守代わりにしてはいけないとか、そういうことも科学的理論に基づいて書いてあったの。
今は平安時代に興味があるけれど、こういう方の本を読むと、万葉集に戻らないといけないのか、と思ってしまうわ。
ふふ、光と影は写真ですか! さとさんらしいわ。
トントン、きれいよね~。ゴージャスな雰囲気が漂っているわ。
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