2020年7月12日日曜日

長唄「虫の合方」覚え書き

このブログは公開していますが、時として私自身の忘備録として残している場合もあります。
今回も忘備録ですので、他の方にはあまりお役に立たない情報かもしれませんが、悪しからず。

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さて、長唄三味線のお稽古ですが、今は「秋の色種」というしっとりとした曲をお稽古しています。
これは、弘化二年(1845)12月、麻布不二見坂の南部侯邸新築祝いとして初演された曲だそうです。
今は亡き夫との思い出を偲ぶ曲だとか。
唄を読んでみると、けっこう色っぽいところもある曲です。


その中で「虫の合方」という部分があります。
ちなみに「合方」というのは、曲の中で、唄はなくて、三味線だけの演奏で、いわば三味線の聞かせどころのような部分です。

この「虫の合方」は、秋のさまざまな虫が鳴いているように聞こえる合方です。
譜面を見ると、それほど超難しい、というわけではありません。
ところが弾き方が難しいのです。

先生から教えていたことを、忘れないようにちょっとメモしておきます。

◆すべての音を同じ強さで弾かないこと。

◆たとえば、同じ音のスクイが続いたときには、先頭のスクイだけを強く弾き(頭打ち)、他の部分は弱く弾くこと。

◆またスクイやハジキの前の音は、基本的には強く弾かないこと。

◆同じスクイでも、ただすくうだけの場合と、すくってから一度別の音のところに指を滑らせ、また戻る場合があること。
たとえば6の音をすくったら、その後に4まで上がり、そしてまた6に降りる技法がある。
このようにすると、三味線の音が重なるようになり、虫の声らしく聞こえる。

そのようなことを、実演とともにお話してくれました。
私が弾くと、ただ三味線の音にしか聞こえないのですが、先生が弾くと、草むらからいろいろな虫が鳴いている様子が伝わってくるようでした。
とても風情のある音でした。

そうか、虫の声をイメージして弾くとよいのかもね。

(注)
スクイというのは、糸をばちで下からすくう技法。
ハジキというのは、糸を(薬指で)はじく技法。

三味線の奥の深さを感じました。

楽譜通りに弾くことは素人でもできますが、いろいろな技法をマスターすると、よりかっこよくなるのですね。
何となくワンランクアップしたような気分になりました。

とはいえ、頭で理解することと、ちゃんと弾けるのは別物ですけど。

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「一日一句」

聞こえるか三味の稽古で虫の声




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