これまで、紫式部に関するものは、小説仕立てのものや解説書、エッセイなど、何冊か読んできましたが、こちらの本は、「源氏物語を楽しむ会」でご一緒しているKさんから紹介された小説です。
「紫式部が藤原道長との間にできた男の子を、同じころに出産した中宮の女の子と交換した物語」だと聞いていたので、どんなキワモノかと思いましたが、とりあえず図書館に予約を申し込んでおきました。
それが入手できて、読み始めましたが、いやいや、なかなか優れた小説だと思いました。
主人公はもちろん紫式部ですが、彼女の心情や周囲の人の反応などが、とても的確に描かれていると思いました。
「源氏物語」の執筆過程も丁寧に描かれていて、いつごろ、どんな時に、どの巻が書かれたのか、また周囲の人の意見や感想がどのように影響して取り入れられたかなど、非常に興味深く読めました。
他の本などでは、「イケスカナイ関係」にあり「大っ嫌い」な清少納言との交流部分も、こちらの小説の中では、お互いに大人の対応をしていて、好感が持てました。
もちろん紫式部の若い頃の生活や、藤原道長との付き合い方、中宮との接し方なども、分かりやすく描かれています。
でもね、紫式部が生んだ男の子や、中宮が生んだ女の子が交換されたことが真実だとしたら、その後の人生を思うと、ちょっと切なくなりますね。
この本の作者の夏山かほるさんという方は、経歴を見ると九州大学で文学の研究をされて、博士号を取得されていらっしゃいます。科研費による共同研究もされていて、そういう意味できちんと学んだ方なのでしょう。
2019年の日経小説大賞を受賞されたのも、うなづけます。
できたなら、藤原一族の家系図も入れていただけたら、なおよかったと思いました。
それにしても紫式部さんという方、千年前の女性ではありますが、千年の時を経ても、さまざまな小説の主人公となるのは素晴らしい方だと思いました。
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「一日一句」
十月や平安人の愛の日々
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