篠田節子さんは大好きな作家さんです。
ホラー作家とか推理作家とか呼ばれていますが、どのジャンルにも属さない作家だと思います。
デビュー作である「絹の変容」を読んだ後の衝撃は忘れません。
その後、「女たちのジハード」や「長女たち」のように女性を主人公にした小説も、面白いものでした。
今回読んだ「夏の災厄」は初出版されたのは1995年だそうですが、まるで現在のコロナ禍を事前に予想していたかのようなパンデミック小説です。
埼玉県のある町に日本脳炎のような奇病が発生しました。夏でもないのに、こんな昔の伝染病が広まるなんて。
その謎をさぐりに、市の職員や大学病院のスタッフ、町の医療関係者などがあたふたと対応しますが、謎は深まるばかりです。
この未曾有の危機にどのようにすればよいのでしょうか。
25年前に書かれた小説では、ワクチンが有効であると書かれていました。
小説にはワクチン以外にも、医師会、産業廃棄物、環境汚染、予防接種、製薬会社、など現在の環境問題、医療問題とも関わりのある言葉が登場します。
今から25年前の作品とは思えません。小説の中ではまだ携帯電話やコンピューターもそれほど普及していなくて、登場人物は公衆電話やFAXを利用していた時代です。
そんな時代背景ですが、篠田さんの凄さを感じました。
そしてちょっととぼけた様子の若い役所の男性、しっかりものの中年の看護婦さんなどの奮闘する様子が、いきいきと描かれていたのも好感が持てました。
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「一日一句」
恐ろしき 小説とはいえ パンデミック
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