このところ暑さのため、川歩きができません。でも橋は渡ってみたい。
ということで、「橋」のつく小説を読んで、その気分を味わおうと思いました。
私の好きな時代小説家の澤田ふじ子さんの著書には、「橋」という文字の入った題名の小説がたくさんあります。
「橋五部作」というのもあるそうですが、今回は一番分厚くて、難しそうな「深重の橋(じんじゅう)の橋」を読んでみることにしました。
(上巻は、写し忘れました)
この小説は貧しく生まれた男の子が、15才のときに人買いに売られて、浴場(というか性産業のようなところ)で下働きをしながらも、文字を覚え、本を読み、そして大人になっていくところが発端です。当時は「牛」という名前で呼ばれていて、その名の通り、牛のように力強い男子でした。
彼の生きていた時代は、室町時代の北条義政将軍の頃でした。ちょうど応仁の乱の前後です。当時は飢饉、凶作、土一揆などが続き、混沌とした時代でした。
実はこの主人公の牛は実在の人で、その後、宇野周玄という扇屋の主になりました。
その彼と、愛する女性、周囲の人たちが登場するお話ですが、それだけにとどまらず、ときの室町時代の将軍、大名、武士や商人、貧しい人々など、多くの人たちが登場します。
その時代背景を理解してもらうために、著者はたびたび多くの歴史資料を提供します。そこには著者の歴史観が反映されています。それで時代背景が分かりやすくなるのですが、あまりにその量が多く、うざったい気持ちになるのは仕方ありませんね。
それでもその資料のお蔭で、応仁の乱がどのような乱であり、日本中のすべての人たちに影響をもたらしたか、ということがよく分かるのでした。
応仁の乱は、簡単にいうと将軍の跡継ぎ、大名の跡継ぎが発端になり、東西両軍が11年間にわたり日本中ドロ沼状態となり、そして下克上の時代でした。
牛の物語は、非常に悲惨で、物悲しいのですが、彼のまっすぐな性格や豪快な態度によって、ただ悲しいだけの物語に終わらず、希望の持てる展開があります。
それにしても室町時代はひどい時代でしたね。一部の政治家や大名などは優雅に暮らしていましたが、普通の人々は病に倒れてもそのままほったらかしにされ、鴨川に流されていたのです。そしてそれを鳥がついばむのでした。
ほんとうに厳しい時代の残酷な物語でしたが、たぶん、これは事実なのでしょう。
またこの時代があったからこそ、日本の文化の多くの基礎が築かれたと思います。
とくに義政の築いた庭園文化は今も京都の各地で目にすることができます。
時代小説というと、とかく江戸時代の話が多いのですが、混沌とした室町時代の話に、非常に興味を持ちました。
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「一日一句」
立秋や 橋の向こうに 希望あり
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