神代植物園の入り口には、「秋の七草」がちんまりと植えられていました。
秋の七草というのは、本来は8月のお盆を過ぎた残暑の厳しいころの季節のものだと思うのだけれど、このごろは、温暖化のためか、10月になってもまだ暑い日が続いていて、昔ながらの「秋」とはほど遠いイメージがしますね。
子供のころは、秋といえば、運動会や遠足などの楽しい行事ばかり思い出されるのだけれど、自分の子供も大人になってしまってからはそういう季節感も薄れました。
それでもこのごろは、さすがに通勤風景が夏のころとは違ってきました。
私の職場は郊外にあるので、今は敷地内にあるすすきの群れを眺めながら、通勤しています。
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さて、「秋の七草」、全部、言えますか?
「お好きな服は」って言って覚えるんですって。
「お」はおみなえし、「す」はすすき、「き」はききょう、「な」はなでしこ、「ふ」はふじばかま、「く」はくず、「は」ははぎだそうです。
おみなえし・すすき・キキョウ・なでしこ・ふじばかま・くず・はぎ
秋の七草というのは、春の七草とは違って、摘んだり食べたりするものではなく、ただ眺めて楽しむもの。
笛や箏の演奏があると尚更いいでしょうね。
そして和歌や俳句のひとつも捻り出せればいいのだけれど。
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私は「秋」というと、「秋好中宮」を思い出します。
源氏物語の中で、主人公光源氏が中年になって建てた豪華なお屋敷は四季に分かれていて、春の家、夏の家、秋の家、冬の家にはそれぞれに女主人が住んでいます。
春は光源氏の最愛の女性、紫の上の住まいで、梅や桜やありとあらゆる花が咲き乱れているの。
それに対して秋の家には、光源氏のかつての年上の愛人である六条御息所の娘が住んでいます。
光源氏は六条御息所の遺言により、その娘を養女として育てるのだけれど、その彼女を光源氏の隠し子(父である帝の奥さんと関係を持ってしまって、その結果生まれた冷泉天皇)と結婚させたという、ややこしい関係でもあるわけ。
で、その娘の彼女のことを「秋好中宮」と呼びます。
ところが、六条御息所からは最期を迎えたときに、「絶対に私の娘とは関係を持ってほしくない」と言われ、それを忠実に守った義理の父である光源氏は、最後まで養女のその顔を見ることもなく一生を終えるわけ。つまり美人なのか、そうでないかはまるで分からないという存在。
現代ならそんなのは信じられない関係だけれども、当時は「顔を見る」というとイコール性的関係があるとい
うことになっていたので、娘であっても御簾越しにでしか話をできないのです。
その彼女は秋の花の咲く住む家にいるのですが、秋の花は、春の花に比べてなんとなくしっとりとしていて、冷静な感じがしますね。
この彼女、絵がとても上手で、それが縁になって9歳も年下の若い天皇の寵愛をいただく、という人でもあるのです。やはり秋が好きな人は芸術的センスがあるのでしょうか。
秋の七草からは話がそれてしまったけれど、私は「秋」というと、どうしても「秋好中宮」のことを思い出さずにはいられないのです。
<神代植物園の植物シリーズ>
ダリア
スイレン
パンパグラス
ひょうたん・へちま・こんにゃく
バラ
撮影は9月のお彼岸でした。
4 件のコメント:
としちゃんの源氏物語解説はいつもとっても楽しみなの。
秋好中宮のお話ありがとう。
秋の七草も含めて二つお勉強できたわ。
感謝感謝だわ。(覚えていますように・・・)
秋は若い時には感じなかった色や風景をこの頃特に感じるの。
写真を始めたからかしら?
色にも深みがありますね。これから特にいい時期です~
さとさん、同じ風景を見ても若いころには感じなかったものを感じられるようになったというのは、それだけいろんな経験をふんできたことの表れかもしれませんね。
「もののあはれ」を感じるようになったのかしら?
私もいつもみなさんから自分では体験できないようないろいろな情報をいただいて、感謝しています。
「お好きな服は」ですか。
これは勉強になったな!
秋の七草は「ふじばかま」と「くず」がいつも出てこなかったのですよ。
諏訪ッチさん、お役に立っていただいて嬉しいわ。諏訪ではもう秋は通り越してしまったのかしら。
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