池袋にある豊島区立の「あうるすぽっと」というホールで行われましたが、とても立派なホールでした。
池袋はフクロウと縁がある町ですが、いけぶくろ→ふくろう→アウルということなのでしょうね。
「明治の柩」は明治時代に日本公害史の原点となった、栃木県の足尾銅山鉱毒に対して問題を解決しようと人生を賭けた政治家・田中正造(劇中では旗中正造)の生涯を描いたものです。
彼は農民の中に入り、明治政府と対決して生き抜きました。
この劇では、社会主義やキリスト教、大日本帝国憲法についての思想が多く語られました。
マルクス、エンゲルス、キリスト、天皇の思想を劇で伝えるのは難しいとは思いますが、当時の農民たちの貧しい生活を通して、生きるということはどういうことなのかを考えさせる劇だったと思います。
この劇は高瀬久男さんという演出家によるものですが、彼は稽古中に57歳という若さでお亡くなりになったそうで、会場には彼をしのぶコーナーも用意されていました。とても才能のある演出家だったようです。
意外だったのは大逆事件で有名な幸徳秋水が、田中とも付き合いがあったということでした。
日本史の教科書では、足尾銅山の問題と、大逆事件とは別々に扱われていたと思いますが、同じ時代のできごとであり、彼らは交流していたというのは意外でした。
そして彼らのような著名人以外にも、貧しい農村で必死に生きる若者たちの姿が描かれていました。何を手掛かりにしてどのように生きたらよいのだろう、と悩む姿が胸を打ちました。
これぞ文学座の正当な劇なのだろうと思いました。
私は、このような劇はあまり鑑賞したことがないので多くは語れませんが、この劇を通して現代の問題点もあぶり出されてきたと思いました。
たとえば当時の植民地戦争政策のために銅が必要であったので、足尾というところに押し付けていたわけですが、このことは沖縄に米軍基地を配備してそれを沖縄に押し付けている現代の姿とダブります。
また原発の問題にしても、汚染を恐れて他の場所に生きる場を求めていく人、生まれ故郷を捨てられずにずっとその場で生きる人がいるということも、谷中村を逃げ出したり逃げ出せなかったりした明治時代と変わらないのではと思いました。
非常に重いテーマの劇でした。
役者さんたちは、主人公を演じた方はもちろん、小さな役の人もセリフが優れていたと思います。
とくにセリフをわざと棒読みにした強制執行官役の人や、常に田中の陰になって後を追っていた巡査の人は、目立っていたと思います。
役者さんというのは、ほんとうに身体を張ってやっているのだと痛感しました。
今回はこのような小冊子までいただきました。
キャストなどのほかに、田中正造が生きた歴史年表もあって参考になりました。
また着物という観点から眺めてみると、明治という時代を考えれば当たり前のことなのですが、登場人物の多くが着物姿(男性は袴や着流しや野良仕事用)だったというのも、目新しい発見でした。
政治家はスーツ姿だろうと思い込むのは、現代の感覚だ、ということを認識しないといけませんね。
中でも若い女性の新聞記者役の着物姿は素敵でした。
長めの羽織を羽織っていたり、二重太鼓をしていたりでしたが、じっくりと眺めてきました。
ただし、草履の底が分厚くて、ちょっと現代風なような気がしましたが。
それと最後の場面で、田中の奥さんの喪服姿で登場します。
全身黒で、帯締めだけが白でしたが、こういう着方もあるのかしら、とちょっと気になりました。
*****
この日の装い。
今年1月の着物交換会でいただいた麻(?)の着物です。
かなり透けて見えるので、自分で大きない居敷当てをつけたのですが、そのせいか、暑く感じました。
帯は去年、たんすやさんで買ったもの。
リサイクル品ではなく、新しい帯なので、長くて結びにくくて大変です。
こちらはおまけの写真です。
会場に行く途中、時間があったので白い帽子を買ってみました。
見知らぬ人から「白い帯と帽子がよく合っているわ」と褒められたので、池袋のショッピングセンターにあった大きな鏡の前で写してみました。
1000円でちょっとした雰囲気が変えられるのなら、着物に帽子というチョイスもよいかもしれませんね。
2 件のコメント:
お帽子オシャレ~、素敵です。
今日は2週間ぶりの着物でお出かけです。
久しぶり過ぎて上手く着られるか不安だわ(笑)
よーでるさん、梅雨時の着物はちょっと気になりますね。
気を付けてお出かけください。
帽子は割と評判がよかったようですよ。
コメントを投稿