図書館で、何気なく手にした文庫本。
暇つぶしに借りてみたのですが、これが案外に面白かったので、ご紹介します。
渡瀬草一郎さんという方の「源氏物の怪語り」(げんじ もののけがたり)。
アスキー・メディアワークスのメディアワークス文庫です。
ご覧のように、表紙がアニメっぽいし、著者のお名前も聞いたことがなかったので、全然、期待していませんでした。
お話は、平安時代。
この世を望月のように思っていた藤原道長さんの娘・中宮彰子の周りには才女がたくさん揃っていました。
源氏物語の著者である藤式部(紫式部)、老境の歌人・赤染衛門、浮き名を流した情熱の歌人・和泉式部、そして伊勢神宮神主の娘・伊勢大輔。
彼女たちは彰子に、漢籍や和歌などを教える役目を担っていました。
そんな女房たちでしたが、藤式部の一人娘・賢子には、姉の物の怪がとりついてしまいました。
そしてその物の怪が、女房たちの悩みや、中宮の複雑な気持ちを解決していく、というお話です。
この小説を読み始めて、何が驚いたかというと、源頼光という武士が登場したことです。
(平安時代に、武士、というのもちょっと違和感がありますが)
この人は、道長に仕えている老境の武士ですが、若い頃には牛よりも巨大な土蜘蛛の化け物を退治したという噂がある人、と書かれていました。
えー、その人のこと、つい先週、「土蜘蛛」▼という能で見たばかりです!
その頼光さんとまた出会ってしまうなんて、本当に驚きましたよ。
紫式部たちは今から千年前の人たち、そして能は今から650年くらい前のことですよね。
ということは、この能は、平安の時代から350年ほど前のお話を元に作られたわけなのですね。
その継続性は、すごいですよね!
土蜘蛛の話は、この小説とは直接関係はないのですが、この小説を読んでいると、平安時代のいろいろな知識が身についてくるようで、とても面白いと思いました。
彰子さまは、中宮としては敵でもある定子さまの忘れ形見の子供を育てていた、なんてことは、知りませんでしたが、そういう結びつきがあったとなると、源氏物語や枕草子の読み方も変わってくるのでは、と思いました。
この小説は、表紙ほどアニメぽくないし、タイトルほどおどろおどろしい中身ではありません。
現代人にも通じることの多い、女房達のお話でした。
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