「おりょう」とは、幕末の英雄である、あの坂本龍馬の彼女として有名なお龍のことです。
サブタイトルの「波枕」は「《波を枕に寝る意から》船中で旅寝をすること。船路の旅」という意味があるそうですが、おりょうさんの人生を船旅にたとえたからでしょうか。
おりょうさんは、京都伏見の寺田屋事件の時、裸で階段を駆け下りて龍馬を危機から助けたとか、「日本で初めての新婚旅行」として鹿児島まで二人で旅行をしたとか、話題にはこと欠かない女性でした。
その階段です。
私が、京都の伏見屋に旅行した時に写しました。その時のブログはこちら▼。
ただし、龍馬が33歳という若さで亡くなってしまった後も、おりょうさんは65歳まで生きながらえたそうで、それも「龍馬の操を守って」生きたのではなく、まるで関係のない男と再婚して生きたのでした。とはいえ、彼女の心の中は、いつまでも龍馬のことで占められていました。
私はおりょうのことはあまり知ってはいませんでしたが、どうも好きになれない人でした。なんというか龍馬の名前だけで生きてきて、いったい本人は何をしてきたのかというポイントが見つからなかったからです。
美人で姐御肌だったそうですが、名前ばかりが先走りしていて内容が伴わないような感じを持っていました。
そのことは、この本の中にあるエピソードを読んで、余計におりょうさんのことが苦手になりました。
たとえば龍馬さんの子分というか、下にいる男性に対して、「私は龍馬の妻なのよ」とい態度を取って、エラソーにしていたことが多かったとか、世話になっている人の家に行っても、いつまでたっても客のように振る舞い、食器の片づけすらしなかったとか、龍馬のピストルで遊んでいたとか、。。。。
そういう態度を取る人は、もし身近にいたら、イヤーな気分にさせられてしまいそうです。
といっても、歴史的な事実もとてもきちんと書かれている小説です。
驚いたことに、彼女は何回も名前を変えているのですよね。
本名のりょう、鞆(とも)、ツル、他にもあったようです。
やはり自分の名前をきちんと名乗れないのは、辛かったのではないかしら。
そして、自分の妹が貧しさから同居することになって、彼女の二度目の夫と、その妹が男女関係になってしまったことは、やはり辛いことだったでしょう。
おりょうさんに同情する部分はありますね。プライドだけは高かった彼女が、夫と妹のことに対しては目をつぶり、酒に溺れてしまうのも仕方なかったのかしら。
歴史を知ったからと言って、今さらどう変わるわけではありませんが、作者のおりょうさんに対する深い愛情が感じられました。
また、おりょうの生き方を通して、幕末の複雑な動きも少しは理解できたかもしれません。
普通の伝記小説とは異なり、主人公の嫌な部分、醜い部分もさらけ出していて、すごい小説だと思いました。
なんだかとりとめのない感想となってしまいましたね。
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「一日一句」
誰それの 妻という名は 辛い冬
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