私の大好きな時代小説作家・宇江佐真理さんがお亡くなりになって、ちょうど2年経ちました。
彼女の新作はもう読めないのかと思うと、本当に残念です。
宇江佐さんは私と同じ年でしたので、やはりもっと長生きしていただきたかったですね。
その彼女の遺作と言える作品が、この「うめ婆行状記」です。
未完の小説と言ってもよいでしょうか。
これは宇江佐さんが、ガンに侵されて、もう命は長くはないとお分かりになって書かれたものです。
そして未完のまま、朝日新聞に掲載されました。
その後、単行本として刊行されました。
内容は中年女性が主人公のお話ですが、ごく日常的なあれこれを綴っていて、時代小説とはいえ、現代に生きる女性の話としても読めるものです。
商家の娘に生まれた「うめ」さんが、ほんとうは気に入らないけれどお武家さんの家に嫁ぎ、そしてダンナさんが亡くなった後は、堅苦しい生活から抜け出して、「もう私一人で自由に生きたい」ということで、一人暮らしを始めるお話です。
とはいえ、周りの家族に振り回されたり、ご近所の人たちに助けられたり、そして病気になってしまったりと、いろいろなアクシデントに立ち向かっていきます。
この頃はうめさんはおばあさんとはいえ、たぶん50歳くらいだったでしょうか。
現代的感覚でいえば、70歳くらいに当たるかしら。
その年になって一人暮らしをするというのは、やはり冒険ですよね。
でも「うめ」さんは、なんとかやってのけてしまいます。
この「うめ」さんこそ、宇江佐さんの分身であるのだろうと思いました。
あとがきは、これも私の大好きな時代小説家である諸田玲子さん。
お二人はとても仲が良かったそうですが、すてきな文章を書かれています。
私もあと何年かすると、うめ婆のように一人で生きることになるかもしれません。
そのとき、うめ婆のように、明るく元気に生きることができるでしょうか。
それにしても宇江佐さんの小説をもう読むことができないのは、本当に悲しいことです。
これまでの作品を何回も読み直しています。
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