宮尾登美子さんは私の大好きな作家のお一人で、ほとんどの著書を読んでいます。
(といっても、読んだそばから忘れていってしまうのが情けないのですが。)
今回手にしたのは「松風の家」。
1992年、文藝春秋から出版されている上下2巻の小説です。
表紙の美しいこと!
江戸時代の京都の絵師・渡辺始興の作品が使われています。
このお話は、裏千家を思わせる「後伴家」(うしろのばんけ)内部の、すさまじい伝記小説といってしまえばそれまでですが、千利休を宗家とする茶道の家元に生きる人たちの人間模様を描いたお話です。
今でこそ裏千家といえば超有名な家元ですが、江戸時代末期から明治の初期にはこんな貧困な時代もあったのでしょうか。
小説の中では、表には立たず裏で家元を支えていた由良子が物語の中心となっています。
彼女は幼くして養女に出され、厳しい養母にしつけられて生きていきます。
彼女の行動範囲は家の周りだけでした。
最初の夫は若死をして分かれ、そしてなさぬ仲の息子を育てつつ、家元を支えていきます。
どこまでが真実で、どこからが著者の作ったお話か分かりません。
それでも、顔が映るほど水っぽいお粥を食べ、道端に生えている草花を食べるほどの貧困の中でも毅然として生きてきた人たち、そしてその家元一家を支えた業躰(ぎょうてい)たちの生き方には、学ぶことがあるのかもしれません。
宮尾さんの本、本当に面白くて一気に読んでしまいました。
お茶の世界に精通していらっしゃる方にとっては、どのような感想を持たれるか分かりませんが、茶道とはあまりご縁のない私にとっては、かなり面白い部類に入る小説でした。
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