「天下人の茶」
伊東 潤 著
私は茶道はしないのですが、どういうわけか、千利休の生涯には興味があり、これまでにも何冊か利休関係の小説は読んでいました。
この小説は、利休がどのようにして死に至ったかの謎を、七哲と言われるいろいろな弟子の立場から理由づけしているものです。
秀吉が黄金の茶室を作った様子や、朝鮮に出兵した様子などが描かれていて、秀吉と利休の濃厚な関係が伺えます。
面白いと言えば面白いのですが、いろいろな人が登場するので、誰が誰だかよく分からなくなります。
利休と秀吉の関係を描いたものが多いのですが、利休がそこまで政治に首を突っ込んでいたのかどうか、私にはよく分かりませんね。
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「家康、 江戸を建てる」
門井 慶喜 著
領地として半ば押し付けられた不毛の地であった江戸を、徳川家康がどのようにして文化的な土地にしていったか、をインフラ面から描いた作品。
5章に分かれていて、利根川の話、貨幣の話、天守閣の話などが描かれています。
家康版の「プロジェクットX」のような感じですね。
利根川の流れを変えた(昔は、今のように曲がっていなかったそうです)話が一番面白く感じました。
武士以外にも大工の棟梁のような人とか、いろいろな職業の人が登場します。
ただ、話としては面白いのですが、この小説も上の利休の話と同じように、オムニパス形式なので、登場人物が多い割には、インパクトが少ない感じがします。
とはいえ、歴史なんて、後世の人の解釈でなんともなるわけですから、いろいろな立場からの見方を描いた方が本当かもしれませんが、やはり読みづらいですね。
力作とは思いますが、女性が全然出てこないのも、なんだか片手落ちのような気がしました。
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「細川ガラシャ夫人」上下
三浦 綾子 著
これは上の二冊とは異なり、一人の人物の一生を追ったものです。
私はこういう方が好きですね。
どうしてこの小説を読む気になったかというと、先月、長岡京に行った時、
「長岡京は、来年の大河ドラマに登場する細川ガラシャと関係が深い」というポスターを見たからです。
彼女が生まれ育った琵琶湖などが美しく語られています。
明智光秀の娘・玉子は、細川元興の妻となります。
勝龍寺城というところに嫁ぎました。
その後、父・光秀が本能寺の変で信長を討ちましたが、天下を取ったがすぐに秀吉にやられてしまいます。
そして父の他にも親兄弟は皆殺しにされ、また自分の子供も死産してしまい、運命のどん底にいるときにキリスト教と出会い、受洗します。
戦国時代に、美しすぎて生まれた女性の姿が描かれています。
三浦さんはこの小説を書くにあたって、かなりたくさんの歴史資料に当たったことだと思います。
この小説を読むと、信長や秀吉の人間性も良く見えてきました。
当時は権力者に逆らうことができなかったのですね。
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「終わった人」
内館 牧子 著
東大法学部を出て、有名銀行に勤めて、なんとか63歳で定年を迎えた男。
彼のその後の人生のあれこれを一人称で綴った小説。
少し前に、舘ひろし主演、黒木 瞳が妻の役で映画化されましたね。
2時間もあれば読み終わってしまう内容です。
同年齢の男性が読むと、どんな感想を持つのか、ちょっと気になりましたね。
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