私の大好きな宇江佐真理さんの小説。
正式タイトルは「春風ぞ吹く 代書屋五郎太参る」。
この小説には殺しも強盗も登場しません。悪役は誰もいません。
出てくるのは、うだつのあがらない武士で小役人の五郎太くんやその友人たち、そして恋焦がれる美しい幼馴染のお嬢さんや、町人たちだけです。
江戸末期ともなると、武士とはいっても小役人はとても貧しいので、アルバイトをしないとやっていけません。
五郎太は「代書屋」という副業をしています。
これは文字を書けない人や文章をうまく綴れない人に代わって、恋文を書いてあげたり、請求書や侘び状などを書いてあげるという職業です。
でも彼はそれだけで終えることなく、学問吟味という超難関の試験を受けるために、猛勉強をしている最中です。
それというのも、恋人のお父さんが「役職のないような男には嫁にやれない」というのですが、その役職に就くためには難しい試験に合格しないとだめなのです。
今で言うと、公務員試験とか司法試験にあたるのでしょうが、きっとそれ以上に難しかったのだろうと思います。四書五経、歴史書、詩などをすべて覚えなくてはならないので、本当に大変で、おまけに試験は毎年あるわけではないので、それも大変なのです。
その猛勉強のため、彼は25歳だというのに、まだ筆おろしもしていない、うぶな青年なのです。
この小説は、とてもほのぼのとした青春小説とでもいうのでしょうか。
若いっていいな、と思うシーンがたくさん用意されています。
そして彼の師匠や恩師、同僚にも、それぞれの過去の悩みや苦労が隠されていて、そのどれもが泣かせる話なのです。
最後はハッピーエンドとなり、五郎太はみごと恋人と祝言を挙げることができます。
頑張って勉強すれば夢が叶う、というお話ですが、現代の若者たちにもそのような夢が望める社会になるといいですよね。
東大や京大を出ても、一つ間違えるとドロップアウトしてしまうような社会は、どこか間違っていますね。
この小説は是非、テレビや映画のドラマにしてもらいたいな。
2 件のコメント:
まあ「筆おろし」などという言葉に思わず顔を赤らめてしまいましたワ(笑)いえそこではないですね。いい内容だなと思って読みました。そうですね、きちんと頑張る人が報われる、そしてきちんと夢を語れるそんな社会に時代にもういちど戻るべきだと思います。
物は豊かだけど、若者の心が疲弊している。
私は自分が社会人2年生にした娘がいるせいか今、盛んに言われているブラック企業という実態に心が痛みます。リーマンショックのあおりを受けて苦労して苦労して就職したらブラック企業だったとか、自殺したとか。
本当にどこか間違っていると思います。
出口のない話になってしまいましたが。この本は出口のあるお話しなのですね。
ところで、甚平着たY君、大きくなりましたね。しっかりしてる。甚平を作ってしまったとしちゃんもすごすぎ。Yくんたちがこれから成長するとき目を輝かせて未来を語れる時代ならいいなと切実に思わずにいられませんね。
あー、ひょっこりさん、私の伝えたかったことをきちんと代弁していただいて、ありがとうございます。
そうなのよ、頑張った人がきちんと報われて、青年が夢を語れるような時代の小説なんです。
少なくとも私たちが若かった頃は、そういう
社会だったはずなんですけどね。
結婚もできない、子どもも産めない、なんて間違っていますよね。
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