今月の九段下での謡音読会は、「熊野(ゆや)」でした。
熊野というのは、平宗盛(清盛の三男)の愛人の名前です。
彼女は遠江の国(今の静岡県)出身ですが、宗盛の寵愛を受けて、都に住んでいます。
宗盛は、彼女と一緒に花見をしたいと熱望していました。
そこに、熊野の侍女が手紙を持参して、お母さんが危篤になったと知り、彼女は静岡に帰りたいと思います。
ところが宗盛は彼女を離しません。
彼は清水寺に牛車を出して、花見に付き合わせます。
そして彼女は桜のもとで舞を舞います。
しかし彼女が母に対する思いを歌に詠むと、さすがに可哀想だと思った宗盛は、彼女が故郷へ帰るのを許すのです。
この能は、平家物語を元にしたもので、お話はたったこれだけですが、美しい文章で謡われています。
「熊野松風米の飯」とも言われるように、何度味わっても飽きのこない能だと言われています。
場所は清水、季節は春、そして美しい女性、と三拍子そろった能ですね。
私が気にいったのは、京都の名所や名刹を次々に謡う場面でした。
「ロンギ」というところです。
鴨川の松原橋から出発して、車大路、六波羅蜜寺、六道の辻、愛宕寺、鳥辺山、経書堂、子安堂、車宿、馬留、鹿間塚、そして清水寺まで続きます。
いつか、私もこの道を歩いてみたいと思いました。
そしていつものように最後の10分ほどは、みんなで少しだけ謡を謡いましたが、私も少しは声が出るような感じになりました。
この会には30人ほどの方が出席しています。
女性の方がやや多いかもしれません。
たまたまこの日、お隣に座ったのは中年の男性でしたが、とても体格がよく、そしてお声も立派で、圧倒されそうな方でした。
お謡もお上手で、見事な趣味をお持ちの方だと思いました。
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この日の装い。
前日に雪が降り、ものすごく寒い日でしたので、ほっこり紬にしました。
世田谷ボロ市で2000円で買ったはいいけれど、裏地がシミだらけで、直してもらったもの。
緑と臙脂色のストライプです。
帯は着物の縞の色から取って、臙脂色に刺繍のざっくり帯。
これは1000円だったかしら。
この上にコートを着て、帽子にマフラーをしましたが、それでも寒かったですね。
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