2016年1月19日火曜日

「衣おはなし会」

先日、着物染織作家で「衣の織」▼主宰の大久保有花さんからお誘いを受けて、「衣おはなし会」というユニークな催しに参加してきました。

ご自身で織られた着物を着て、スライドで説明する大久保さんです。


会場は御茶ノ水でした。
駅の周辺には、楽器屋さんがひしめていました。


そういえば45年程前、この近くに「お茶の水タイピスト学院」(たぶん?)という各種学校があり、私はそこに英文タイプや和文タイプを習いに通っていました。
タイピストになろうと思ったわけではなく、当時は学生運動が華やかな頃で、私が通っていた大学もロックアウトされて、授業もほとんどなかったので、その代わりにタイプを習っていたのです。
また、そのころ付き合っていた人が日本大学で学んでいたので、御茶の水はよく通っていた場所でした。
あの頃は、明治大学の学食が安くておいしいということで、たまに利用していましたが、たしかA定食が100円だったと記憶しています。

こちらは現在の明治大学。
立派になりましたね。
どこかのオフィスのようです。


御茶の水駅は、大学卒業後も仕事で乗り降りに利用していたので、懐かしい場所でした。

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昔話が長くなりましたが、そういう思い出の御茶の水で、大久保さんから染織の基本的なお話しを伺い、そして実演を拝見することができました。

まず大久保さんの自己紹介から始まりました。

サントリーのCMで、大原麗子が着物姿で登場していたのを見て、「私もこういうふだん着物を着てみたい」と思われたそうです。
でも、結城紬などは高くて買えない。
「それなら自分で織ってしまおう!」という動機で、結城で織り子さんの修行をされたそうです。

その後、一時は別の道に進んだそうですが、やはり染織に深く関わりたいと思い、人間国宝である志村ふくみさんの京都の学校で学び、昨年、ご自身で「衣の織」という組織を立ち上げたというストーリーを伺いました。

その後のレクチャーを簡単にご紹介しますね。

衣類の材料は大きく分けて、動物性繊維(シルクやウールなど)と植物性繊維(木綿、麻、藤など)、そして化学繊維の3種類あり、そして麻や藤などは、いかに糸にするまでの工程が大変であるかというお話しを具体的にされました。

とくに藤は生えている場所に辿り着くまでが大変、枝を切るのが大変、水に晒すのが大変、おまけに糸にしても繊維が短くて、ということで、布にするまでの苦労は並大抵ではないそうです。


それに比べると、綿は種を植えて花が咲き、その後にはすぐに棉(種が入っている状態)が取り出せるので、とても簡単に利用できる素晴らしい繊維だというお話しでした。

そして綿紡ぎの実演の部になります。

種を含んだ棉を手前の道具に入れてハンドルを回すと、あら不思議、綿と種が前後にうまく分離するのです。
左のざるに落ちるのが綿、手前の箱には種だけが入ります。


そしてその綿を弓(竹をしならせて、琴の糸を張ったもの)でパタパタと叩くと、綿がふわふわになります。
この道具は大久保さんの手作り品です。


そのふわふわの綿を、今度はきりたんぽ状にくるくると丸めます。


そして紡錘形の道具(名称は聞き忘れました)につないで、糸車をくるくると回すと、きれいな長い糸が巻き取れるのです。


こちらは、この会のお世話役のMさんが挑戦しているところです。
生まれて初めての体験ということでしたが、ちゃんと糸になりました。
感激ものですね。


この糸紡ぎの操作は、単純ですが、精神を集中して行うことによって、瞑想効果が生まれ、ハッピーな気分になれるのだそうです。

この糸を、こんどは地機(じばた)につけて、生地を織るのですが、この道具はなんと奈良・平安時代のころから同じ形である、ということでした。
この地機は、織る人の腰に吊るして織るので、機械で織るのとは異なり、柔らかいものになるということでした。

この実演を見て、糸紡ぎや機織りは究極のスローライフだと思いました。

大久保さんの希望としては、今後は綿の種を実際に畑に栽培して、そして綿を作り、布を織っていきたいということでした。

手間と時間はかかるかもしれませんが、長期的な展望が開かれるようで、とても魅力的なお話しでした。

ちなみに、私が大久保さんと出会ったのは、こちらの「きものサローネ」▼の会場でした。

工房がご近所だということが分かり、紅花染の実験▼をご一緒にしていただいたりして、私は秘かに「地元の織り姫さん」だと思っている方なのです。

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このお話し会の参加者は10数名でしたが、着付け師さん、洋裁師さん、編みぐるみ作家さん、市役所の職員さん、建築家さん、日米を股にかけたプロデューサーさんなど、みなさんユニークな活動をされていらっしゃる方ばかりでした。
静岡や宇都宮など遠方からいらっしゃった人も多く、みなさん、熱心に話しを聞いたり質問をされたりしていました。

講演後は、ちょっとした食べ物を持ち寄って、おしゃべり会となりました。


私は手前にあるスイートポテトを持参しました。
いびつですが、手作りしましたよ。

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この日の装い。

初対面の方ばかりだったので、ちょいと真面目そうに白の半襟に、藍色の紬にしました。


うたどんさん▼のお母様が着ていらっしゃった着物です。

帯はデパートの催事で1000円で見つけて買ったもの。
「草木染め」と書いてありましたが、きれいな朱色で、お買い得でした。

ということで、今回も着物も帯も、ほとんど費用はかけていませんよ。




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